痰が絡むような咳、くしゃみ、鼻汁…2カ月以上続くなら「慢性気管支炎」かも 原因と治療法【ペットドクター相談室】

13歳になるミニチュアダックスフンドを飼っています。ここ一年ほど痰が詰まったような咳をします。鼻も詰まっている事もあり、くしゃみをした拍子に粘度の高い鼻水が出る時もあります。かかりつけの動物病院には相談していますがそれに関してはこれといった処置はありません。咳の頻度は日に5~6回ほどですが、それより多い日もあります。(ミニチュアダックスフント、カイちゃんママさんの相談)【お答えします】福井県獣医師会 開業部会 柴田動物病院(福井県福井市)村上昂暉獣医師

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 具体的な疾患が存在しないにもかかわらず、気道の炎症により痰が絡むような咳(湿性の咳)が2カ月以上持続した状態を、慢性気管支炎と呼びます。慢性気管支炎では気管支から粘液が過剰に分泌されますが、これの原因として、大気中に浮遊する粒子や気道刺激性化学物質への長期曝露、受動喫煙、微生物の気道感染後の線毛や免疫の機能不全等が考えられています。

 同じような症状を示す気道感染症、喉頭麻痺、気管虚脱、気管支軟化症、気道内異物や胃食道逆流症との鑑別には検査が必要です。

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慢性気管支炎と診断されたら…

 慢性気管支炎と診断された場合、治療としてステロイド薬や抗菌薬、気管支拡張薬、去痰薬などが使用されることがあります。また、呼吸症状の遷延や増悪は生活環境における気道内刺激物質と深く関係しており、埃・塵・煙などからの回避や居住空間の清浄化も、症状緩和のために重要です。

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鼻づまりや粘度の高い鼻汁、くしゃみの症状 考えられる病気は?

 鼻詰まりや粘度の高い鼻汁、くしゃみの原因は、鼻炎、副鼻腔炎、鼻腔内腫瘤(ポリーブ、腫瘍等)、歯周病等の可能性が考えられます。

 鼻炎や副鼻腔炎は細菌、ウイルス、真菌などの感染による場合や、アレルギー性などがあり、原因の特定を行った後それに即した治療を行います。鼻腔内腫瘤の確認と診断には動物病院での検査が必要であり、治療法も検査結果により様々です。

 また「くしゃみなのに歯周病?」と不思議に感じられるかもしれませんが、歯周病では歯の根元付近で生じた歯肉の炎症が鼻腔まで波及することがあります。以前と比べて口臭が強くなり、歯石や歯垢の増加、歯肉の赤み、歯の露出面積の増加等があるようでしたら、歯周病もくしゃみや鼻づまりの原因として鑑別の候補に挙がります。

 歯周病の場合、治療にはホームデンタルケアのほか、麻酔下でスケーリングや抜歯等の処置を必要とすることもあります。いずれも咳の鑑別と同様に検査が必要なので、かかりつけの動物病院さんにご相談してみてください。

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