次期衆院選、兵庫の公明「牙城」に強い危機感 候補擁立に意欲の維新、自民の一部に主戦論も

次期衆院選の兵庫2、8区の対応を話し合うため、地元議員を集めて開いた維新の会合=5月28日、神戸市内

 次期衆院選の兵庫2、8区で、日本維新の会の動向が注目されている。公明党が長年、議席を維持してきた「牙城」に候補者を立てる意欲を見せているためだ。これまで両選挙区への擁立を見送ってきた自民党と公明との関係も、東京での選挙協力を巡ってぎくしゃくしており、兵庫県内の情勢はこの3党を中心に波乱含みとなっている。

 先月28日、兵庫維新の会は、2区(神戸市兵庫、北、長田区、西宮市北部)と8区(尼崎市)で活動する県議や市議らを集めた。衆院選の候補擁立について意見を聞くためだった。

 「全員が主戦論で一致した」。協議後、同会の片山大介代表は取材に答えた。独自候補を立てることに異を唱える議員はいなかった。兵庫の総意を馬場伸幸代表に伝えるという。

 近年の維新の浸透は県内でも目立つ。2021年の衆院選は2、8、9区を除く9選挙区に立てた候補者全員が当選(比例復活を含む)。昨年の参院選兵庫選挙区(改選数3)は片山氏がトップ当選し、2、8区内では公明候補とほぼ同数の得票だった。4月の県議選(定数86)は前回の9から21に議席を倍増させた。

 維新は従来、「大阪都構想」への協力の見返りに、公明が牙城とする大阪、兵庫の計6選挙区には候補を立てなかった。だが統一地方選の大阪での圧勝を受け、馬場代表は「関係を一度リセットする」と明言。直接の協力関係にない兵庫での主戦論に火を付けた。

 「公明に選挙区を譲るメリットを兵庫は受けていない」と片山代表。「候補を出せれば潜在的な票を掘り起こせる。勝算は十分ある」と自信をのぞかせる。

 ある維新関係者は「兵庫の選挙区は大阪に近く、党の看板で勝てるプレミアチケット」と表現。議員が増えても実績は未知数で、大阪の勢いに頼らざるを得ない実態は変わっていない。

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 攻勢の構えを見せる維新に、公明は警戒を強める。同党兵庫県本部の幹部は「維新が立てれば間違いなく厳しい戦いになる」とするが、「受けて立つ」と強気の姿勢を崩さない。

 2、8区は小選挙区制が導入された1994年以降、公明が議席をほぼ独占してきた「常勝関西」の象徴だ。指定席を失ったのは民主党政権が誕生した09年のみ。99年から連立政権を組む自民とはすみ分け、相互に支援を行っている。

 ただ近年、支持母体・創価学会の高齢化や組織の衰退で集票力が落ちており、県本部関係者は、これまで活用していない「選挙区と比例代表の重複立候補も必要では」と万全の策を提案し、危機感を募らせる。

 自民との関係にも火種を抱える。東京28区で自公の候補者調整が不調となり、公明は都内での選挙協力の解消を通告。党首会談で政権維持を確認し、火消しを図ったが、公明が関西の議席を維持するため、維新に東京限定の選挙協力を持ちかけ「バーター」するとの見方も取り沙汰され始めた。

 兵庫の自民には一部で「(すみ分ける)2、8区にも独自候補を立てるべき」との主戦論がくすぶっており、信頼関係の崩壊から飛び火を懸念する声もある。

 県内の公明議員は「東京の事情は影響しない」と冷静に受け止め、こう訴えた。「さまざまな選挙で自民を応援してきた。今度こそ返してもらいたい」(金 旻革、井沢泰斗)

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