時価総額1兆ドル超え!エヌビディアが急騰したのは何故なのか

先週、5月29日週にアメリカの半導体メーカー・エヌビディアの時価総額が、一時1兆ドル(日本円で140兆円)に達した事が話題となりました。半導体メーカーでは、初めての1兆ドル企業です。

これまで1兆ドルを超える企業は7社あり、アップル、サウジアラムコ、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、テスラ、メタで、エヌビディアは8社目となります。皆さんもいくつかの企業は耳にした事があると思います。


半導体メーカーで初の1兆ドル超え

時価総額とは、「現在の株価 × 発行済株式数」で求められる数字の額で、企業価値を評価をする上で重要指標です。時価総額が大きいということは業績だけではなく、将来の成長に対する期待も大きいことを意味します。

エヌビディアが、なぜ時価総額1兆ドルの企業になったのか−−簡単に説明したいと思います。

同社は、AI分野で広く使われる画像処理半導体を手がけ、AI向け半導体で世界シェア8割を握る企業です。最近話題の「ChatGPT(チャットジーピーティー)」などの生成AIの開発や利用に適した半導体製造に強みがあります。

5月24日(水)の米国市場終了後に同社が発表した決算で、2023年2-4月期決算(第1四半期)は、1株利益、売上高ともにアナリスト予想を上回りました。またデータセンター、ゲーム部門とも予想を上回る内容となり、同社のフアンCEOは「データセンターの設備一新に向け、信じ難いほどの注文が舞い込んでいる」と述べました。今後1兆ドル規模のデータセンターインフラが整備され、「ChatGPT」など生成AIの稼働が進むとされています。

データセンターの整備などを受け、エヌビディアの株価は、2023年になって約2.7倍となり、半導体メーカー初の1兆ドル企業となりました。

エヌビディアの急騰を受け、米国SOX(半導体)指数も大幅高となり、日経平均株価においても構成比率の高い東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)が上昇し、先週、5月29日週末は1990年7月以来、およそ33年ぶりの高値となる31,524円で引けました。

日本市場が復活するための鍵は?

33年前の日経平均株価は、バブル崩壊によって右肩下がりの状況下でした。今回は上昇局面であり、今後更なる上値をつける可能性もありそうです。

日経平均株価は33年前の水準ですが、当時の時価総額は上回っています。当時の日本企業の時価総額の合計は約400兆円で、米国ともほぼ変わらない状況でした。

しかし、現在プライム市場の時価総額の合計は、約750兆円です。対して、米国市場は約6,000兆円と言われており、実に日本の8倍です。

世界の時価総額1位のアップルは約395兆円、2位のマイクロソフトは約320兆円、グーグルのアルファベットは約290兆円、アマゾンが170兆円の時価総額を誇ります。対して、日本の時価総額1位はトヨタ自動車の約31兆円、2位、3位のソニー、キーエンスが約16兆円となっています。

ネット証券などが開示するNISAランキングなどを見ると、S&P 500やオールカントリー、全米株式のインデックスなどが上位で、米国株に資金が流入していることがわかります。前途したように、米国市場の圧倒的なスケールメリットによるものを感じます。

しかし、日本市場も確実に変化してきています。東証が昨年来フォローアップ会議の中で、企業側に株価を意識した経営を促しています。特にPBR1倍割れ企業に対し強いメッセージを送っています。企業側も減益にも関わらず増配や自社株買いなどを行う企業もあります。

その変化を受けて、海外投資家も4月以降、日本株買いを鮮明にしています。またクイック資産運用研究所によると、5月は日本株を選定して運用するアクティブ投信への資金流入が目立ち、定評のある米株指数型を超す投信も出てきたとの報道もあります。

更なる企業の変革が、日本市場の復活の鍵となるように感じます。

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