結婚式場の6割が黒字に回復 “ジューンブライド”  でコロナ前を目指す

~ 全国158社「結婚式場業」業績調査 ~

コロナ禍に翻弄された結婚式場の業績は回復局面にあるが、売上高はコロナ禍前の7割強にとどまることがわかった。全国の結婚式場運営会社(以下、結婚式場)158社の2022年(1-12月期)の売上高合計は、2,903億8,400万円(前期比44.0%増)、利益は56億8,500万円(前期487億5,400万円の赤字)だった。
コロナ禍の三密回避を背景に、婚礼自粛などが広がり、結婚式場の業績は2020年、2021年と大幅に悪化した。2022年はワクチン接種や感染防止対策の広がりなどで婚礼数が徐々に回復し、売上高はほぼ2020年の水準に戻した。また、最終利益も2019年以来、3年ぶりに黒字転換した。ただ、令和婚ブームとなった2019年に比べると、売上高は7割強(76.0%)、利益は5割強(54.3%)にとどまり、結婚式場の業績回復はまだ時間がかかりそうだ。

厚生労働省の「人口動態統計速報(2022年12月)」によると、2022年の婚姻件数は51万9,823組で、2021年の51万4,252組を5,581組上回り(前年比1.1%増加)、3年ぶりに増加に転じた。
また、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」では、婚礼取扱件数は2020年の3万6,783件を底に2022年は7万3,237件まで約2倍に回復した。コロナ禍前に訪れた“令和婚ブーム”となった2019年の8万6,304件には及ばないが、コロナ禍の落ち着きとともに取扱件数は回復の兆しをみせている。
だが、人口減少・少子化のなかで婚姻件数の下落傾向は続いている。さらに初婚年齢が上昇し、晩婚化も進んでいる。コロナ禍の影響で大きなダメージを受けた結婚式場は、多くの女性が憧れる6月のジューンブライドの季節を迎え、どこまで活性化するか注目される。

※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約400万社)から、日本産業分類(小分類)の「結婚式場業」を対象に、2022年の業績(2022年1月期~12月期決算)を最新期とし、4期連続で売上高が判明した158社(利益は75社)を抽出し、分析した。
※アイ・ケイ・ケイホールディングス(株)(TSR企業コード:930078314)の業績は2021年11月、持株会社に移行したため連結決算ベースとした。

売上高は2021年に比べ44.0%増

結婚式場158社の2022年の売上高合計は2,903億8,400万円(前期比44.0%増)で、3年ぶりに増収となった。だが、コロナ禍前の2019年の3,815億8,300万円の7割強にとどまる。
2022年は、2020年以降のコロナ禍から回復に転じ、婚礼取扱件数が増加した上場企業を中心に売上高は回復をみせた。
一方、2022年の当期純利益は56億8,500万円の黒字(前期487億5,400万円の赤字)だった。2020年、2021年は赤字だったが、大手を中心に2022年は3年ぶりに増益に転じた。ただ、2019年(104億6,400万円)の半分にとどまった。

売上高5億円未満が60%超

売上高別では、売上帯の最多は1~5億円未満の51社(構成比32.2%)で、1億円未満が46社(同29.1%)と続く。
5億円未満が全体の6割(61.3%)で、大半を中小・零細事業者が占めている。
全国に事業展開する大手とエリア限定で事業展開する中小との二極化が特徴となっている。

売上高増減別 増収企業が3倍増の約6割に回復

売上高の増減をみると、2022年の増収企業は92社(構成比58.2%)で、減収企業は35社(同22.1%)、横ばいが31社(同19.6%)だった。2021年の増収企業は28社(同17.7%)だったのに対し、2022年は3倍増と急回復した。
2022年の売上高伸長率は、10~100%未満が66社(同42.3%)で、以下、0~5%未満が39社(同25.0%)と続き、100%以上は9社(同5.7%)だった。2021年に比べ、大手上場企業を中心に売上高の回復が鮮明になった。

損益別 黒字企業が約6割

最終損益では、2022年まで4期の利益が判明した75社では、2022年の黒字は43社(構成比57.3%)、赤字は32社(同42.6%)だった。コロナ関連給付金、助成金など、営業外収益の寄与で黒字となった企業もあった。
黒字企業数は2019年の53社にはおよばないものの、2022年の黒字企業率は57.3%と、前期の24.6%から32.6ポイント改善した。

従業員数別 10~50人未満が4割

従業員数別は、10~50人未満が63社(構成比39.8%)で最多だった。次いで、100人以上が32社(同20.2%)、5人未満が23社(同14.5%)と続く。
上場企業は100人以上と従業員数が多い一方、50人未満の中堅規模や小規模企業は106社(同67.0%)と約7割を占めた。


コロナ禍で婚礼需要が激減し、結婚式場は2020年、2021年と経営に苦戦していた。だが、新規感染者数の減少などで、結婚式を延期していた婚礼需要が戻り始め、業績の回復傾向が強まっている。
ただ、コロナ禍を契機に、最近はハウスウェディングブームが広がり、婚礼業界にアパレル企業など異業種からの新規参入が増えるなど、新たな競争が生じている。
これに対抗する形で、大手結婚式場では海外でブライダル事業を強化する動きや、施設のリニューアル、大型施設の開業に乗り出すなど、業界の動きが活発化している。大手の一部では、さらにホテル建設やレストラン事業などを強化し、顧客獲得を目指している。
今後、婚姻件数が大きく増えることが見込めない環境下で、資金が潤沢な大手や新規参入組に地域密着の中小の結婚式場がどう対抗していくか注目される。
人口減少のなかで、結婚式場としては対応策が限られるだけに、強みを生かした独自戦略を確立して新たなニーズをつかめるか、生き残りをかけた競争が続く。

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