虐待、性暴力体験の女性が語る被害のリアル 機嫌取るため「笑顔」の日々

身ぶりを交えながら、身近な暴力に敏感になってほしいと話す柳谷さん(大津市梅林1丁目・滋賀弁護士会館)

 虐待や性暴力被害の経験のある心理カウンセラー柳谷和美さん(55)を講師に招いた講演会がこのほど、大津市梅林1丁目の滋賀弁護士会館で開かれた。柳谷さんの過酷な体験談に、参加者らは真剣に耳を傾けていた。

 児童虐待防止に取り組むNPO法人「子どもの虐待防止ネットワーク・しが」(大津市)が主催し、約30人が参加した。柳谷さんは、「おやこひろば桜梅桃李(おうばいとうり)」(大阪府吹田市)の代表を務めながら、自身の経験を踏まえ、性犯罪やDVに関する講演を各地で行っている。

 この日の講演で柳谷さんは、父親から怒鳴られたり殴られたりした幼少期を振り返り、「怖くて家の中でいつもビクビクしていた。母親は『あんたはお父さんの子。私は産んだだけ』と助けてくれなかった」と説明。父親の機嫌を取るために常に笑顔で振る舞っていた経験から、「見た目で分かる『被害者らしさ』『加害者らしさ』など存在しない」と話した。

 また、5~7歳で近所の友達の父親やいとこから受けた性暴力については、ずっと違和感を抱き続け、中学生になって被害の意味を理解したといい、「子どもらしく過ごせるはずの時間が失われた」と振り返る。理解してからも、怒られると思って親には言えなかったとし、「家庭の中で安心して何でも話せる環境づくりが必要」と指摘した。

 その上で、「加害者がいなければ被害者も生まれない。加害者をつくらないために、予防としての性教育をしなければいけない」と訴えた。

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