【現役獣医が解説】犬のフィラリア予防を始める前に知っておきたい事

フィラリア症って?

毎年欠かさず行う必要のあるフィラリア症の予防ですが、なぜ予防が必要なのか、どんな病気なのかご存知ですか?

実はフィラリア症は身近に潜んでいる病気です。

犬糸状虫の感染によって起こる病気

フィラリア症は犬糸状虫(フィラリア)という寄生虫が蚊を媒介してわんちゃんの体内に寄生することで起こる病気です。

細い糸状のフィラリアの子虫が蚊を媒介して血管内に入り、成長して血管や心臓内に寄生します。現在、国内でもフィラリア陽性のわんちゃんは存在し、身近に起こり得る感染症です。

蚊の媒介によって起こります

フィラリアの子虫は蚊の吸血によりわんちゃんの体内に送り込まれます。

フィラリアに感染しているわんちゃんを吸血した蚊が、子虫を蚊の体内に取り込み、他のわんちゃんを吸血する際に子虫を血管内に感染させます。

そのため、フィラリアに感染しているわんちゃんや蚊が身近にいれば、フィラリアの感染は成立します。毎年の予防が欠かせず、蚊の活発な時期に予防薬の投薬が必要になります。

循環障害や呼吸異常が特徴的

糸状虫が感染した場合、循環障害や呼吸異常が起こることが一般的です。

血管、心臓内にフィラリアの成虫が詰まることで、心臓への負担が大きくなり血液循環の異常などが起こります。

そのため、嘔吐や食欲不振、元気消失などの症状が見られることが特徴的です。咳や呼吸促迫などの異常な呼吸、ひどい場合は呼吸困難に至る場合もあります。

駆虫と併せて、症状に合わせた治療を行う必要があります。以前は外科的な手技で駆虫することが一般的でしたが、最近は内服での駆虫が一般的です。

完全な駆虫が行われるまでに時間がかかることが多いです。

フィラリア症の予防について

毎年欠かせないフィラリア症の予防ですが、どのようなお薬が必要なのか、ご存知ですか?

大切なお薬でもありますが、おうちのわんちゃんの性質に合っていなければ、投薬の際に飼い主さんが大きなストレスを感じる場合もあります。

そのストレスから投薬をあきらめてしまうケースもありますが、投薬の休止により感染の危険性に暴露されてしまうため注意が必要です。

蚊の活発になる時期の予防が大切

地域による差はありますが、基本的には蚊の活発な時期の投薬が必要になります。

かかりつけの先生に、お住まいの地域での適切な投薬期間を確認してから投薬することをおすすめします。

また、最近では温暖化により、蚊の活発な期間が長くなっていることもあり、一年間休薬をせずに投薬し続けることを推奨される場合もあります。

わんちゃんの体の状態や、他にも飲んでいるお薬との関連を考慮したうえで選択していただくと良いでしょう。

いろいろなタイプの予防薬がある

飲み薬が苦手なわんちゃん、体に障られることが苦手なわんちゃん、普段からあまり飼い主さんと距離が近くなることを好まないわんちゃん、動物病院を極度に嫌うわんちゃんなど、性格によって様々なわんちゃんがいるでしょう。

毎年欠かせないお薬と定期的な投薬は、わんちゃんの性質に合っていないと、飼い主さんにとっても大きな負担となってしまう危険性があります。

おやつのフレーバーのようなタイプ、小さな錠剤のタイプ、背中に滴下する外用タイプ、1度の接種で効果が持続する注射のタイプなど、フィラリアの予防薬は様々なタイプが存在します。適切なお薬を選択することが大切です。

予防薬とは?

予防薬という名前ですが、実際には体内に入り込んだ子虫を駆虫するお薬になります。

子虫が体内で成長し、血管や心臓を物理的に充満させるなどで負担を与えることで症状につながります。成長する前に子虫の段階で駆虫を行うことで、症状につながらないようにするお薬です。

実際には駆虫薬であるため、成虫が感染している場合にはお薬の投薬が逆に害を与える危険性があり、注意が必要です。

予防を始める前に行うべきこと

お薬を投薬する前に必ず確認が必要なことがあります。健康を守るためのお薬が、害を与えてしまう危険もあるため、注意が必要です。

わからなくなった場合はかかりつけの先生に必ず確認しましょう。

おうちの子に適したお薬の選択

予防薬はたくさんのタイプがあるというお話をしましたが、おうちの子の性格に合ったタイプのお薬を選ぶことはとても大切です。

例えば食べ物に対して警戒心を示す子であれば、背中に滴下するタイプや注射タイプ、ごはんに混ぜて与えたい場合は小さな錠剤タイプなど、飼い主さんの判断やかかりつけの先生との相談で決めることで定期的な投薬の負担から飼い主さんも解放される可能性が高いです。

しかし、予防薬という名前ですが、駆虫効果のあるお薬であるため、おうちの子に適した用量で行う必要があります。お薬は体重に応じて、また使用する頻度も定められていることが一般的です。

指定されている規格のお薬を選ぶこと、使用する頻度も月1回の投薬または年に一度の接種と指定されている頻度を守ることなどがお薬により体に負担を与えてしまうリスクを軽減し、フィラリア症の予防の効果がきちんと発揮されることにつながります。

フィラリアの感染の有無の確認

フィラリア予防薬は、体内に入り込んだ子虫を成長する前に駆虫することでフィラリア症の発症を防ぐお薬というお話をさせていただきました。

そのため、飼い主さんの投薬忘れなどで、すでに体内に子虫が入り込んで成長した段階で投薬をしてしまうと、駆虫薬によって血管や心臓内で成虫が死亡し、ショック症状を起こす場合があります。

ショック症状によって、わんちゃんが死に至る危険性もあるため注意が必要です。

休薬期間や投薬忘れがあった場合は、必ず感染をしていないかを検査によって確認してから投薬をスタートすることが大切です。

病院での検査が苦手なわんちゃんなどは、休薬期間を設けずに、年間での投与などをご検討いただくと良いと思います。

まとめ

フィラリア症は身近に存在する怖い病気です。おうちのわんちゃんを危険から守るためにも予防は欠かせません。定期的な予防薬の投薬が難しいものである場合、飼い主さんも大きな負担を感じるでしょう。

負担なく定期的に予防するために、どんなお薬が適切なのか、わからない場合はかかりつけの先生と相談してみてくださいね。

(獣医師提供:葛野莉奈)

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