今季J2で異質な存在感を見せる藤枝MYFCは、昨季J3で2位入りして昇格した。
苦戦を予想されていたチームだったが、長崎、仙台、千葉、徳島とJ1経験のあるチームを立て続けに撃破。
得点数では22チーム中5位と昇格組とは思えない攻撃力を見せている。
主に3-4-2-1の陣形を取ってボールを正確に繋ぎながら保持しながら、10ゴールで得点ランキング首位のFW渡邉りょうの決定力に、二列目、三列目の積極的な多段攻撃で相手にラッシュをかける。
その中でも異彩を放っているのは右ウイングバックのMF久保藤次郎だ。
相手の背後を突くフリーランに、高精度のクロス、そして優れた決定力で3得点5アシストとチャンスメイクとフィニッシュの両面で大車輪の活躍を見せている。
昨季はルーキーながらJ3で昇格に大きく貢献した久保の実力に迫る。
藤枝が誇るステルス爆撃機
ウイングバックは最も難解なポジションと言われることがある。
ウイングほどゴールに近くなければ、サイドバックほど低いスタートポジションではない。
そして広大なサイドをウイングとサイドバックのタスクをバランス良くこなさなければならない。
位置取りを上げ過ぎれば失点のリスクが増大し、下げ過ぎれば広大なスペースを相手に使われてしまう。
そのため絶妙なポジショニングの感覚が求められる。
久保はそれらの難解極まりないタスクを卒なくこなしている。
相手の背後を狙うフリーラン、ハーフスペースに速やかに侵入するアジリティと敵が久保の存在に気付けば「時すでに遅し」といった具合に危険なエリアでボールを受けている。
この相手をよく観察しながら絶妙に動き出すステルス性が久保の攻撃力に直結している。
優れたインテリジェンスに基づいたポジショニングは絶妙で、PA内で受ければ鋭いシュートを放ち、サイドに開けば局面に合わせて多彩な球種で高精度クロスを供給する。
そしてウイングバックに要求される豊富な運動量を持ち合わせ、攻守の切り替えも早くて守備も献身的にこなす。
攻守に渡って隙がない右サイドの制圧者は、「藤枝のステルス爆撃機」と言っても過言ではないだろう。
才能の片りんを見せた特別指定選手時代
名古屋グランパスの下部組織であるグランパスみよしFCを経て、岐阜の名門・帝京大可児高へ進学。
高3年次は全国選手権にも出場し、1回戦の徳島北高戦では1得点を挙げるなど3回戦進出に貢献した。
高校卒業後は東海地方の強豪・中京大に入学。
1年次から一軍に定着し、夏の総理大臣杯4強入りしたメンバー入りした。
中京大3年次は東海学生リーグ1部で10得点を挙げて得点王に輝き、藤枝から加入内定と特別指定内定を勝ち取った。
167センチと小柄ながら、サイドの突破力に秀でたアタッカーは、プロの舞台でも才能の片りんを見せた。
J3第19節福島ユナイテッド戦でプロ初得点をマーク。
相手のマークを外してドライブ気味のシュートをゴール左隅に突き刺した。
特別指定選手時代の成績は6試合2得点2アシストと圧巻の数字を記録し、その才能の片りんを見せつけた。
昨季はWBながら10得点6アシストで大ブレイク
昨季は久保の独壇場と言ってもいいシーズンだった。
変幻自在の動き出しと位置取りで相手を翻ろうし、敵の裏を欠いたプレー選択で右サイドを制圧し続けた。
J3ベストイレブンには惜しくも入選しなかったが、ウイングバックで30試合10得点6アシストは圧倒的な数字であり、久保がいなければ藤枝のJ2昇格は実現したかっただろう。
今季もJ2で優れたプレーを見せる背番号24は、複数のJ1クラブから注目を集めているといわれている。
優れたインテリジェンス、掴みどころのないポジショニングと動き出し、そして多彩な攻撃パターンと、J2でも輝きを放つサイドプレイヤーが市場に出れば引く手数多だろう。
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いずれはJ1挑戦、欧州移籍、日本代表選出と夢見てしまう逸材。藤枝の右サイドを駆け抜ける久保から目を離すことができない。