恩師の通夜当日に合格通知 金沢・東山の大村さん、蒔絵の伝統工芸士に

徳田さんと共同制作した仏壇を見つめる大村さん=金沢仏壇商工業協同組合石引事務所

  ●金沢仏壇の技受け継ぐ

 金沢仏壇には欠かせない蒔絵(まきえ)師の大村智子さん(45)=金沢市東山1丁目=が金沢仏壇商工業協同組合では10年ぶり、女性組合員として2人目となる伝統工芸士に認定され、さらなる技術の向上を目指している。合格を知ったのは、27年にわたり指導してくれた親方の徳田茂雄さん=当時(65)=の通夜の日だった。大村さんは「親方の顔に泥を塗らないよう教えを守っていく」と精進を誓う。

 伝統工芸士は伝統的工芸品産業振興協会(東京)が認定する。12年以上の経験がある職人に受験資格があり、実技、知識、面接試験に全て合格すると認定される。大村さんは昨年10月に試験に挑んだ。

 徳田さんは昨年12月24日に亡くなり、大村さんに合格通知が届いたのは通夜のあった同26日だった。「合格は親方のおかげ。親方は試験の結果を心待ちにしていて、もう少し早く分かっていたら」と大村さんは振り返る。

 大村さんは県工高工芸科漆芸コースを卒業後、「一休さんの米永仏壇」に就職し、徳田さんに出会った。徳田さんは現代的でシンプルなデザインの仏壇を好んでいた。徳田さんと大村さんが交互に仏壇に雲や花の絵を描くなど、仏壇を共同で制作したこともあった。

 金沢仏壇商工業協同組合は5月29日、石引4丁目の組合石引事務所で開いた総会で、伝統工芸士に認定された大村さんを表彰した。金沢仏壇も職人の高齢化と担い手不足が進んでおり、組合は大村さんに期待を寄せている。

 大村さんは「親方は根気強く指導してくれて、お父さんみたいな存在だった。これからは金沢仏壇をもっとたくさんの人に知ってもらえるように技術を磨きたい」と話した。

© 株式会社北國新聞社