富山県産シャクヤクを「養命酒」原料に 農家の収益増期待

県薬用植物指導センターで乾燥させた「春の粧」の根

 富山県がブランド化を進めてきたシャクヤクの品種「春の粧(よそおい)」が、薬酒メーカー大手の養命酒製造(東京)の「薬用養命酒」の原料に採用された。県が6日発表した。高い品質が評価され、同社が自社栽培以外で唯一使う国内産シャクヤクとなる。生薬用のシャクヤクは大部分を輸入に依存し、国内生産の体制整備が求められている。県は農家の収益増につながるとして、生産を広げたい考えだ。

 シャクヤクの根は鎮静効果があるとされ、「葛根湯」など漢方薬に広く用いられる。日本漢方生薬製剤協会によると、2020年度は原料全体で3番目に多い約1712トンが生薬として使われた。97%以上は中国産だが、中国国内での需要の高まりなどから価格が上がっており、国産への転換が望まれている。

 県は10年からブランド化に着手。約230品種の中から、有効成分「ペオニフロリン」の値が高い「春の粧」を選び出し、18年から中山間地域を中心とした栽培農家に苗を供給してきた。シャクヤクの根は収穫まで4年がかかるため、22年に2戸で初めて収穫した。

 県薬用植物指導センター(上市町広野)に整備した乾燥施設で根を乾かし、養命酒製造にサンプルを送付。ことし6月に入って同社から「医薬品原料としての品質規格を満たしている」と返答があり、採用が決まった。8日にセンターで323.4キロを同社に引き渡す。

 薬用養命酒は14種類の生薬を原酒に漬けて作られる。シャクヤクは一部を自社で栽培する以外は全て輸入していた。同社は「今後、国外からの入手が難しくなるリスクに備え、国産の採用を決めた」と説明。有効成分の高さも決め手になったという。取引量は全体の数%程度だが、「将来的には数量を増やして取引できればよい」とした。

 22年度時点で県内で薬用シャクヤクを栽培する110戸のうち、「春の粧」の生産者は10戸にとどまる。根を収穫するまでの収益確保が課題で、県は肥料を与える作業の省力化や、観賞用としての花の出荷などに向けた検証を進めている。県農産食品課は「今回の採用を追い風に生産体制を整え、農家の収益アップを実現したい」と話している。

「春の粧」の花。見た目が華やかで、観賞用としても流通している=県薬用植物指導センター

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