JR西日本と福井県は6月6日、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を組み合わせた「クロス・リアリティー(XR)」技術を使った観光バスを2024年夏に導入すると発表した。JR福井駅を起点に県立恐竜博物館(勝山市)など県内の主要観光地を結ぶ複数ルートを予定。恐竜がいた時代や戦国時代にタイムスリップしたような映像が車窓や天井に映し出され、非日常的な空間を楽しめる。
来春の北陸新幹線県内延伸後の観光コンテンツの目玉として企画。県庁で会見したJR西の漆原健金沢支社長は「県内に多くある魅力ある観光名所までの移動自体をエンターテインメントとして楽しんでほしい」と述べた。バス2台を導入、県は映像制作などで協力し京福バス(福井市)が運行を担う。
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JR西によると、車窓に映像を映し出す方式のXRバスは22年に東京で導入されたのに続いて2例目。JR西では初の試みとなる。
窓ガラスに貼り付けた液晶画面に恐竜や戦国時代の景観を映し出し「車内が映画館のような空間」(JR西)になるという。バスが加速したタイミングで恐竜が追いかけてくるといったような臨場感ある仕掛けを検討している。
福井駅と主要観光地を結ぶ片道型の運行形態をメーンとする予定。漆原支社長は「例えば目的地からの帰りはJR越美北線を利用いただくなど、既存の交通手段と組み合わせた周遊旅行を提案していきたい」と話し、地域の公共交通の活性化にもつなげたい考え。期間限定でなく通年運行を予定しており、料金や運行スケジュールは今後発表する。
杉本達治知事は会見で「かつて存在した恐竜や(朝倉氏が拠点とした)一乗谷のまち並みなど、今では見ることができないものを、XR技術によってリアリティーをもって感じていただけると楽しみにしている」と期待。恐竜博物館や一乗谷朝倉氏遺跡(福井市)、あわら温泉などを運行ルートとして提案していきたいとした。
XRバス導入にあたってJR西と県は6日、連携協力に関する協定を締結した。JR西は福井銀行グループなどとの共同出資で特別目的会社を設立し、車内に設置するXR設備の開発を進めていく。