飲食業の倒産が急増、すでに前年上半期を100件上回る 宅配・持ち帰りの凋落が顕著、居酒屋も苦戦続く

~ 2023年(1-5月)「飲食業の倒産動向」調査 ~

2023年(1-5月)の飲食業倒産(負債1,000万円以上)は、337件(前年同期比73.7%増、前年同期194件)と急増した。すでに2023年は5月までに、前年上半期(1-6月)の237件を100件上回った。
新型コロナ関連倒産は226件(同96.5%増、同115件)と約2倍に急増、構成比は約7割(67.0%)に達した。前年同期の59. 2%から7.8ポイント上昇し、コロナ禍の影響がジワリと広がっていることを示している。

業種別では、「宅配飲食サービス業」28件(前年同期比300.0%増)と「持ち帰り飲食サービス業」17件(同112.5%増)が、それぞれ大幅に増加した。この2業種はコロナ禍で需要が高まり、新規参入が相次いだが、コロナ禍が次第に落ち着き、ブームの終焉とともに淘汰が始まっている。
コロナ関連倒産は、「酒場・ビヤホール(居酒屋)」が82.6%(57件)と唯一、構成比が8割を超えた。人流や経済活動が回復してきたが、長時間の宴会を避けるなど、コロナ禍で浸透した新しい生活様式はすぐには戻らず、売上減少に直面する居酒屋業態も多く二極化が進んでいる。
資本金別では、「1千万円未満(個人企業他含む)」が289件(前年同期比87.6%増)と急増し、構成比は85.7%と前年同期から6.4ポイント上昇した。
コロナ関連融資に加え、休業や時短営業に伴う給付金、協力金などの手厚い支援で倒産は抑制されていた。だが、長引くコロナ禍で支援効果が薄れ、飲食業は再び小・零細規模の倒産が増えている。小・零細企業は新たな投資が難しい一方、食材費や光熱費の高騰、人手不足は深刻さを増している。このため、今後も体力が乏しい飲食業者を中心に淘汰が進むとみられる。

※本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2023年(1-5月)の倒産を集計、分析した。


コロナ関連支援の希薄化が顕著に、飲食業倒産は7カ月連続で増加

2023年(1-5月)の「飲食業」倒産は337件(前年同期比73.7%増)で、飲食業倒産が年間最多を記録した2020年以来、3年ぶりに上半期で400件台に乗せる可能性が高まっている。月次では、2022年11月から7カ月連続で前年同月を上回った。特に、2023年は1月から毎月、前年同月比50.0%以上の増加率で、飲食業倒産を抑えていたコロナ関連支援の効果切れが鮮明になっている。
また、飲食業ではコロナ関連倒産の構成比が約7割(67.0%)と高止まりしている。コロナ禍の影響から抜け出せず、コロナ融資で過剰債務に陥り、新たな資金調達が難しい飲食業者は多い。さらに、昨年から続く食材価格や光熱費などの上昇は落ち着く気配が見えず、経営に重くのしかかっている。

業種別 「宅配飲食サービス業」が28件で前年同期の4倍

業種別の最多は、「食堂,レストラン」の91件(前年同期比106.8%増)。以下、「専門料理店」72件(同89.4%増)、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」69件(同30.1%増)の順。
増加率では、最大が「宅配飲食サービス業」の前年同期比300.0%増(7→28件)。次いで、「持ち帰り飲食サービス業」が同112.5%増(8→17件)で、コロナ禍の巣ごもりや中食需要の高まりを追い風に事業者が増加した業種を中心に、ここにきて淘汰が始まっている。
倒産件数に占めるコロナ関連倒産の割合では、「居酒屋」の82.6%(57件)が最大。以下、「そば・うどん店」と「すし店」が各75.0%(3件)、専門料理店が72.2%(52件)で、4業種でコロナ関連倒産の割合が7割を超えた。

原因別 「販売不振」が8割

原因別では、「販売不振」が最多の274件(前年同期比77.9%増)で、飲食業倒産の81.3%を占めた。以下、「既往のシワ寄せ」23件(同53.3%増)、「他社倒産の余波」15件(同66.6%増)の順。
『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は297件(前年同期比75.7%増)で、構成比は88.1%を占めた。

資本金別 「1千万円未満(個人企業他含む)」の小規模倒産が1.8倍

資本金別では、「1千万円未満(個人企業他含む)」が289件(前年同期比87.6%増)で、前年同期(154件)の1.8倍に増加した。内訳は、「1百万円以上」が134件(前年同期比91.4%増)、「個人企業他」が90件(同100.0%増)、「5百万円以上」が33件(同13.7%増)、「1百万円未満」が32件(同220.0%増)。
一方、「1億円以上」はゼロ(前年同期1件)で、唯一、前年同期を下回った。

都道府県別 増加33、減少5、同数9

都道府県別では、増加が33都道府県、減少が5府県、同数が9県。
件数が10件以上では、増加は愛知400.0%増(6→30件)、神奈川137.5%増(8→19件)、北海道120.0%増(5→11件)、大阪95.6%増(23→45件)、千葉83.3%増(6→11件)、兵庫75.0%増(12→21件)、福岡66.6%増(9→15件)、東京20.0%増(40→48件)。
一方、減少は沖縄100.0%減(3件→ゼロ)、鳥取100.0%減(1件→ゼロ)、京都54.5%減(11→5件)、岐阜50.0%減(2→1件)、奈良20.0%減(5→4件)のみ。
地区別では、9地区すべてで前年同期を上回った。前年同期比100.0%以上の増加率だったのは、中部48件(前年同期比140.0%増)、北海道11件(同120.0%増)、東北16件(同100.0%増)、四国6件(同100.0%増)の4地区。

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