介護人材の紹介料高騰、1人100万円超も 事業者の経営圧迫 人手不足で独自採用難しく

超高齢化社会を迎え、県内の介護事業所では人材確保が大きな課題となっている(本文と直接関係ありません)
高騰し続ける人材紹介会社の手数料について説明する社会福祉法人・愛成会の佐々木理事長

 青森県内の介護事業者が人材紹介会社に支払う紹介手数料がかさみ、経営を圧迫するケースが目立っている。1人の採用につき60万~120万円の手数料を支払う事業所や、派遣や紹介に関する費用が年間1300万円に上る社会福祉法人もある。背景に、深刻な人材不足の中で各事業者が独自での採用が困難になり、人材紹介業者に頼らざるを得なくなっている事情がある。関係者からは「介護報酬が、民間会社の高額な手数料に回ってしまうのは健全ではない」「国は何らかの規制を行うべきだ」との声が上がる。

 弘前市の社会福祉法人・愛成会では2022年度、特別養護老人ホームなど七つの高齢者施設で働く介護職員約100人のうち14人を、紹介会社を通して採用し、手数料として計約1320万円を支払った。「紹介料の相場は年収の25~30%で、1人90万~100万円になる。経営に影響を与えている」。佐々木哲理事長は険しい表情で語る。

 全国介護事業者連盟が21年、全国の法人を対象に行った調査では、介護職員1人の採用に必要な手数料の平均は49万5千円だったが、関係者によると、最近はさらに高騰しているという。

 八戸市の介護関係者は「介護分野に市場を見いだした人材紹介会社が、宣伝・広告に費用を投入し、その跳ね返りで手数料が上昇している」と推測する。

 介護保険制度で決められた職員数を配置できなければ、介護報酬の減算対象となる。事業の縮小や中止に追い込まれる可能性もあるため、各事業者は人材確保に腐心する。

 八戸市の介護事業所は、職員1人の採用に60万~120万円の手数料を支払っている。施設の代表は「自社で採用する力があれば良いのだが、現場は人材不足。紹介会社に頼まないといけない」と説明。複数の関係者は「ハローワークに頼んでも紹介は少ない」と戸惑いを語る。

 階上町などでグループホームなどを運営する株式会社リブライズの下沢貴之代表は「公的保険制度に民間人材業者が入り込むような現状は、健全とは言えない」と指摘。「介護報酬から紹介料を抜き取られると収支が悪くなるだけ。介護職の待遇改善ややりがいを感じるような仕組みにはならない」と語る。

 高額な人材紹介手数料は国の関係会合でも問題として取り上げられており、実態調査に乗り出す動きがある。介護事業関係者の中には「公的資金を原資にしている介護報酬が、高額な紹介料に使われるのは望ましくない」などの声もある。

 「介護や保育の人材確保は国策として何とかしてほしい」と訴える愛成会の佐々木理事長。「施設運営の安定のため、手数料を定額にしたり、年収の10%に抑えたりするなど、国は何らかの規制を設けるべきだ」と主張する。

© 株式会社東奥日報社