新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが「5類」に引き下げとなり、8日で1カ月。感染状況の落ち着きもあり、医療機関に大きな混乱は起きていない。「診療する医療機関が増え、負担が軽くなった」と受け止める医療関係者がいる一方、「まだ対応医療機関は足りない」「感染状況が把握しづらくなった」と、課題を訴える声も上がる。福祉施設では利用者と家族が面会する機会が増え、喜び合う姿が見られるようになった。
5類移行に伴い国は、季節性インフルエンザのように幅広い医療機関で、新型コロナの診療を受け入れる体制を目指している。県によると、新型コロナの外来対応医療機関は、7日現在で351カ所。1カ月間で新規の対応機関が66カ所増えた。
下北地方の中核病院・むつ総合病院(むつ市)の葛西雅治副院長は「軽症の感染者を受け持つ医療機関が地域に増え、私たちは重症化リスクが高い人への対応に時間を割けるようになった」と歓迎。一方で、第8波のような急拡大が起きた場合に備え「感染が落ち着いている今のうちに、診療に手を挙げる医療機関が増えてほしい」と望む。
県の千田昭裕新型コロナウイルス感染症対策監は「人口当たりの対応医療機関数は、全国平均より不足している。院内感染対策に不安がある医療機関への助言を通じて、さらなる増加へ働きかけを進める」としている。
入院調整の方法も変わった。近藤内科胃腸科(青森市)の近藤博満院長は「保健所を介さず医療機関同士で入院調整をするようになったが、混乱は見られない」と現状を説明する。
県内の感染状況に、大きな変化は見られない。藤崎町の小児科・せきばクリニックでは、新型コロナの患者が週に5~7人程度。関場慶博院長は「以前に比べ、本当に少なくなった」と受け止める。
弘前市の健生病院では、感染疑いの受診者は減った一方、検査の陽性率は高く、5割以上という。救急集中治療部の太田正文科長は「これまでのように感染者数や死者数が公表されないので、実態が全く把握できない」と頭を悩ませる。
▼福祉、面会機会増え「明るく」
青森市の特別養護老人ホーム「三思園」では5類移行後、面会件数が大幅に増えた。面会を通して喜びを表す入居者や家族の姿が見られるという。法人本部の高橋大治郎事務長は「5類移行以前も面会は可能だったが、『施設内に(ウイルスを)持ち込んではいけない』『迷惑をかけてはいけない』という配慮や遠慮が家族側にあったため、面会を控えていたのだろう」と語った。
階上町などでグループホームなどを運営する株式会社リブライズの下沢貴之代表は「制限緩和により部屋でゆっくりと面会できることで、入居者や家族の表情は明らかに明るくなっている」と述べた。
平川市の介護老人保健施設「三笠ケアセンター」では、職員が県外へ出る場合に提出してもらっていた届け出を廃止。「濃厚接触」の区分がなくなったため、それを理由とした職員の特別休暇もなくなった。担当者は「以前に比べ、制限が少なくなった点では気持ち的に楽になった」としつつ、「職員の周辺で感染者は出ており、決して気が抜ける段階ではない」と気を引き締めた。