社説:不祥事続く維新 問われる資質、党内統治

 国民からの注目は、厳しくもなっていることを自覚すべきだ。

 4月の統一地方選で躍進した日本維新の会で、議員の不祥事が相次いでいる。国会質問で根拠のない不適切発言を繰り返した問題に加え、ハラスメントや政治資金の疑惑などが明らかになった。

 執行部の対応は後手に回り、党勢の急伸に議員教育や組織の統制が追いついていないように見える。「野党第1党を目指す」と馬場伸幸代表は全国的な拡大を急ぐが、ふさわしい党と認められるには体質改善が問われよう。

 大きな批判を招いたのが、入管難民法改正案を巡る梅村みずほ参院議員の質問だ。施設収容中だったスリランカ人女性の死亡問題で、支援者の助言で女性が病気を装ったかのような発言を続けた。

 出入国在留管理庁の調査報告書にもそうした記載はない。ところが「事実はないが、可能性は否定できない」と侮辱的な臆測を重ねた。議場での発言は免責される議員特権まで振りかざしたが、根拠なく本人や支援者をおとしめる行為が許されるはずがない。

 執行部は「問題提起」とかばったが、高まる批判に一転、6カ月の党員資格停止とした。だが、処分理由は「党の指示を無視した」と発言内容は含めず、梅村氏は撤回をしていない。入管の保護責任から目をそらす質問を容認し、権限強化の法改正に賛成するのでは党の人権意識を疑われよう。

 本拠の大阪でも、府議団代表だった男性府議による女性議員への過去のパワハラ行為が発覚。執行部が口頭注意した後、セクハラも判明して除名処分に切り替えた。他の所属議員への調査で複数の被害申告があったという。再発防止へ自浄能力が求められる。

 不透明な政治資金管理も見過ごせない。先月、石井章参院議員に事務所費を巡る政党交付金の流用疑惑が浮上。京都府総支部幹事長を含む府議2人と京都市議1人の政治団体が、2年連続で政治資金収支報告書を未提出だったことも露見した。

 京滋の統一選でも伸長した維新は、京都府と京都市の両議会で他党と組み第2勢力となり、大津、宇治などの市議会で新会派を設けて存在感を高めている。各種世論調査で野党首位の支持率を背に、次期衆院選へ積極的な候補者擁立に動いている。

 与党の「補完勢力」ともやゆされる曖昧な姿勢に加え、議員の資質確保と政党としての倫理、統治に筋を通さねば、有権者の期待は失望に変わりかねない。

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