社説:女性版骨太方針 道筋示し実効性高めよ

 どこまで実効性のある取り組みを打ち出せるかだろう。

 政府が、女性活躍の重点施策を盛り込んだ「女性版骨太の方針」の原案をまとめた。近く閣議決定する経済財政運営の指針「骨太方針」にも反映させる。

 原案では、東京証券取引所の最上位「プライム」上場企業を対象に、2025年をめどに女性役員を1人以上選任するよう求め、30年までに女性役員の比率を30%以上とする目標を設定した。努力義務だが、企業には実現に向けた行動計画の策定を呼びかける。

 内閣府によると22年7月時点で、プライム上場企業で女性役員比率が30%を超えているのは2.2%。約2割で女性役員がゼロだった。フランスや英国などでは比率が4割を超えており、日本の立ち遅れは著しい。

 本紙の昨年調査では、京都、滋賀の主要企業でも半数が女性役員ゼロだった。

 かねて日本では、女性の正規雇用比率が20代後半から下がる「L字カーブ」が問題視されてきた。結婚・出産での退職に加え、家事や育児、介護は依然女性の負担が重いことが主因とされる。能力ある女性が、柔軟に活躍できる抜本的な環境整備は不可欠だ。

 原案では、女性の所得向上のため、男女間賃金差の公表義務付け企業の対象を、従業員300人超から101人以上に広げることを検討するとした。

 男性の育休取得促進のほか、2歳未満の子を持つ親が時短勤務をした場合、男女どちらでも手取りが減らない給付金制度の創設も盛り込んだ。

 一定の収入を超えると、社会保険料の負担が生じ、女性が働く時間を抑制する一因とも言われる「年収の壁」については、制度の見直しも視野に入れるという。

 問題は数字ありきでなく、社会や企業の意識を変える方策である。数合わせの女性役員や、育児・家事に関わらない「取るだけ育休」にとどまっては意味がない。

 そもそも政府は03年、指導的地位に占める女性の割合を「20年までに30%程度にする」と決めたが、政治家や官公庁職員の女性比率は依然低く、目標を「20年代早期」に先送りした。政府・与党は、まず自らの足元から取り組みを積み上げるべきではないか。

 大切なのは、女性が「活躍の場を広げたい」と思えるかだ。女性が安心して働ける環境は、誰もが暮らしやすい社会に通じよう。政府の本気度が問われている。

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