ALS嘱託殺人事件「元医師ら2人が去った後に容体急変」 現場にいたヘルパー証言

京都地裁

 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者から依頼され、薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人などの罪に問われた元医師の山本直樹被告(45)=医師免許取り消し=の公判が8日、京都地裁(川上宏裁判長)であった。事件当時、現場となった女性宅にいたヘルパーが証人として出廷し、山本被告らが訪れた際、ドアの前に立たれて室内の様子がうかがえなかったことや、立ち去った後に女性の容体が急変したことを証言した。

 証人尋問によると、24時間態勢で介護を受けていたALS患者の林優里(ゆり)さん=当時(51)=が暮らす京都市中京区のマンションに、山本被告が訪れたのは2019年11月30日午後5時20分ごろ。インターホンの画面には、共犯とされる医師の大久保愉一(よしかず)被告(45)と山本被告とみられる2人組の男が映っていた。ヘルパーは、事前に林さんから「友達が訪ねて来る。寝ていても上がってもらうように」と聞いていたため2人を部屋に入れた。どちらかが「優里さん」と声をかけると、林さんは少し笑顔を見せていたという。

 ヘルパーは、自分が台所に移り、林さんの寝室は3人だけとなった場面について、はさみや蛍光ペンを取りに2回入室し、3回目に訪問者の名前を記入してもらうため扉を開けようとすると「男性が目の前にいてドアが全て開かなかった」と回顧した。

 両被告が立ち去った後、ヘルパーが寝室に戻ると林さんは珍しく寝ている様子で、「優里さん」と呼びかけたが目を覚まさず、頰に触れたり肩をゆすったりしても反応がないため容体が急変したと察知。主治医が到着するまでの間、心臓マッサージをしたと明かした。

 検察側によると、両被告が女性宅に滞在したのは十数分間。大久保被告が林さんに薬物を投与する間、山本被告がヘルパーを見張っていたと指摘した。一方、弁護側は「ヘルパーが寝室に入れないようにしたことはない」と主張した。

 

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