プロ声優と農業、異色の「二刀流」24歳が選んだ京都の山間部への移住

「声優の仕事をしながら、自分で口にするものは自分で作れるようになりたい」と語る姫野さん(京都府京丹波町)

 姫野雅さん(24)は、京都府京丹波町に移住した若手の新規就農者。持ち前の明るい声を生かして、プロの声優としても高みを目指す。異色の兼業で「いずれは農作物や地域を紹介したい。自分が発信することで、若い世代にもっと農業を身近に感じてほしい」と夢を語る。

 鳥取県で生まれ、幼少期から高校時代までを京都府京田辺市で過ごした。声優を志すようになったのは中学生の頃。大好きなマンガやアニメの世界に「自分も声で入りたい」。大阪市の専門学校で声優の基礎を学んだ。

 卒業後、仕事の拠点が多い関東地方で1人暮らしをしていた時のこと。「日本が食糧難になったら、将来生きていけるのだろうか」。新型コロナウイルスが猛威を振るう中、スーパーに並ぶ食品の値段の高さと、それに群がる人の多さに危機感を覚えた。

 同時に浮かんだのは、幼い日に見た京丹波の風景だった。山々に囲まれ、緑豊か。親戚と一緒に自然に親しんだ記憶が懐かしくなった。京都市内で理学療法士をしながら、同町で農業をこなす父からも影響を受け、「一芸を極めるのも大事だが、食べ物を自分で作ることも大事」と考えるようになった。

 生活拠点を京丹波町に移したのは昨年11月。声優歴3年と「まだまだ駆け出し」で、仕事やレッスンで月に数回は東京へ向かう。その他の時間は、家族や地域住民から指導を受けながらニンニクやシイタケなどの栽培にいそしむ。

 高齢化や人口減が進む地域にとって貴重な若手として、子どもから年長者まで幅広い世代から慕われる。同地区が毎年取り組むサッカーJ1京都サンガFCを応援する田んぼアートには、代かきから携わった。

 最近、町内で有機栽培を行う農家へ弟子入りした。新規就農者向けのセミナーにも参加するなど、学ぶ意欲は尽きない。「年を取れば、農業をする時間が今以上に増えるはず。若いうちにたくさん勉強しておきたい」

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