TOYOTA GAZOO Racing、将来のル・マン参戦を見据えた水素エンジンコンセプトカーを公開

 6月9日、フランスのサルト・サーキットで開催されているWEC世界耐久選手権第4戦・第91回ル・マン24時間耐久レースの会場内で、レースを主催するACOフランス西部自動車クラブがプレスカンファレンスを行ったが、この会見に、トヨタ自動車豊田章男会長が出席し、2026年に水素エンジンを動力とした車両でのル・マン24時間参戦が認められたことをうけ、将来の参戦を見据えた水素エンジン車両のコンセプトカー『GR H2 Racing Concept』を発表した。

 例年ル・マン24時間では、決勝レース前日の金曜日にサーキット内側にあるスタッド・マリー・マルヴァン内でプレスカンファレンスが行われ、シリーズの将来など多くの事柄が語られてきたが、今年の会見ではWECの来季カレンダー等が発表されるとともに、出席したトヨタ自動車豊田会長から水素エンジン車両のコンセプトカー『GR H2 Racing Concept』が発表された。

 今季、“耐久レースの価値を体現する”人物として“スピリット・オブ・ル・マン”を受賞した豊田会長は、プレスカンファレンスのなかで今年100周年を迎えたル・マン24時間への祝辞、そして長年TOYOTA GAZOO Racingが参戦し、“レースを通じてクルマを鍛えさせてもらった”ことへの感謝を述べた。またプレスカンファレンス内では、バランス・オブ・パフォーマンスについてチクリと指摘し笑いをとる場面もあった。

 さらに豊田会長からは、5月27日に富士スピードウェイで行われたスーパー耐久第2戦富士24時間のなかで、ACOピエール・フィヨン会長が発表した、2026年に水素カテゴリーへ燃料電池車両に加え、水素エンジン車両の参戦を認めるとした発表を受け、将来の参戦を見据えた水素エンジン車両のコンセプトカー『GR H2 Racing Concept』が発表された。この車両は水素エンジン+ハイブリッドシステムのパワートレーンを搭載するとされている。

 TOYOTA GAZOO Racingは、2021年から豊田会長がオーナーを務めるROOKIE Racingとともに水素エンジンをモータースポーツに投入。その年の富士24時間に、GRヤリス用エンジンを気体水素で燃焼させる水素エンジン車『ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept』で参戦を開始した。この車両は『つくる』、『はこぶ』、『つかう』という水素の利活用に向けた業界内外の仲間を加えつつ、2年近くの参戦で大幅に航続距離と性能を向上させると、2023年第2戦富士24時間からは、液体水素を車体に積む困難な挑戦にトライ。多くの技術的な課題を克服し完走を果たしていた。

 この発表と同時にこの『GR H2 Racing Concept』が、会場内に設けられた“ハイドロジェン・ビラージュ(水素村)”で公開された。車体は現在シリーズに参戦するトヨタGR010ハイブリッドと似ているが、フロントフェイスは最新のトヨタの市販車と近い意匠が感じられる。TGRは「こうした“モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり”と“カーボンニュートラル社会の実現”に向けた取り組みをさらに進め、新世代のル・マン24時間レースに挑戦していきます」としている。

 フィヨン会長は富士スピードウェイでの記者会見時、水素エンジン、および水素を動力とする車両がハイパーカークラスと同じ舞台で戦うと語っている。現在スーパー耐久に参戦しているORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、車体の重さなどからそのレベルのパフォーマンスにはまだまだ及ばない。ただ、2021年の登場から2023年の液体水素での参戦まで、およそ不可能と言える技術を乗り越えてきた。TGRがこのコンセプトカーで示す『将来の参戦』がいつになり、それまでにどんな進化が実現されるのか楽しみなところだろう。

水素カテゴリーへの参戦に向けたプロトタイプ車両『GR H2 Racing Concept』
水素カテゴリーへの参戦に向けたプロトタイプ車両『GR H2 Racing Concept』
水素カテゴリーへの参戦に向けたプロトタイプ車両『GR H2 Racing Concept』
水素カテゴリーへの参戦に向けたプロトタイプ車両『GR H2 Racing Concept』
プレスカンファレンス会場内では水素村内のコンセプトカーの様子が映し出された。

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