弘前大学で3日、青森県弘前市在住の音楽家多田慎也さんが作詞の特別授業を行い、思いを言葉にして、音楽に乗せて表現することの楽しさ、奥深さを伝えた。
人文社会科学部の古村健太郎准教授が担当する、「住民参画論A」の時間に実施した。テーマは「作詞による自己表現-みんなの中に眠っていることば」。約50人の学生や一般の参加者たちは、多田さんが授業のためにあらかじめ作成したメロディーに思い思いの歌詞をつけた後、タイトルを考案する実習を行った。
多田さんは「多くのサビには、最初と最後に目立つ音があるので、そこにインパクトがある言葉を入れると良い歌詞になる」「同じ言葉でも、カタカナにしてみるとイメージが変わったタイトルになることがある」などとアドバイス。
学生と対話しながら幾つかの完成作を論評し「結構、内省的な人が多いと感じた。自身、暗い学生時代を過ごしたが、おかげで自分と向き合うことができた。うまく進めないときは、自分のクリエーティブ力を上げるとき」などと述べた。
「コーヒーとミルクみたいに/正反対なぼくらだけど」などと男女の関係性を例えた山内麻里有(まりあ)さん(2年)の作品に目を留めた多田さんは、休憩時間中に別室でレコーディングし、披露。山内さんは「頭の中で考えたことが実際に曲という形になるという体験を通して、歌の力はすごいとあらためて思った」と喜んだ。
質疑で「エンターテインメントの仕事をする上で、弘前の街の土壌をどう思うか」という質問に、多田さんは「古いものを受け継ぎながら、新しいものを生み出すという点で、ポップスの仕事は弘前の街の姿とよく似ている」と答えた。
「永遠想い~トワオモイ~」というタイトルが高く評価された成田好花(このか)さん(4年)は「言葉はただの文字の羅列ではなく、そこに込められた思いこそ大事で、時には思いがけず人を傷つけることもある。日常の中でも、何かを発信するときにはよく考えたい」と話していた。