2月死去のアマ音楽家嶽本さんを送る会 慕う20組、感謝の鎮魂曲

音楽会の終盤、嶽本さんへの感謝の思いを込めて熱唱する出演者

 栃木県の県北を中心にドラマーや音響オペレーターとして活躍し、2月に73歳で亡くなった大田原市小滝、アマチュア音楽家嶽本章(だきもとあきら)さんを音楽で天国に送ろうと、親交が深かった音楽仲間らが5月中旬、那須野が原ハーモニーホールで追悼の音楽会を開いた。約20組が感謝の気持ちを込めて5時間にわたり音を奏で、約100人の聴衆は惜しみない拍手を送った。音楽会の実行委員会代表の美原2丁目、レストラン店主鷹觜浩英(たかのはしひろえい)さん(62)は「県北の音楽を育ててくれた恩人。音楽の力がこの地に根付いていることを再確認した」と話した。

 嶽本さんは愛媛県宇和島市出身。約30年前、転勤で市内に引っ越してきた。「音楽ができないなら転勤はしない」と会社に掛け合うほどの音楽好き。ドラマーやベーシスト、パーカッショニストとして活躍したほか、音響オペレーターなど裏方としても県北のアマチュア音楽を支えた。2020年ごろからは闘病しながら活動を続けていた。

 豊富な知識と高い技術を持ちながら、誰とでも分け隔てなく接する人間性から「師匠」「だっきゃん」の愛称で慕われた。20年以上の付き合いがある那須塩原市太夫塚3丁目、会社員松野二朗(まつのじろう)さん(54)は「礼儀正しく、とにかく音楽が好きな人」と振り返る。

 「音楽で天国に送ってあげたい」。音楽仲間が集う店を営む鷹觜さんや、松野さんらを中心に、音楽会を企画。県北で活動する音楽家らがライブのほかビデオレターの形で出演した。

 同市、シンガー・ソングライター君島大輔(きみしまだいすけ)さん(40)はアップテンポのオリジナル曲を力強く歌い上げた。「嶽本さんは音楽の楽しさを教えてくれた。にぎやかな曲で送りたかった」

 大田原市住吉町2丁目、しの笛奏者のAsh(アッシュ、本名・谷口賢一(やぐちけんいち))さん(59)は17年、打楽器「カホン」をたたく嶽本さんとユニットを結成。昨年10月には単独コンサートを開催していた。「まだ受け入れられない部分もあるが、どこか爽やかな気分。音楽を続けていくことが、一番喜ばれるはず」と晴れやかな表情を浮かべた。

 終盤、鷹觜さんが作詞作曲した「さよならは言わないよ」を出演者全員で熱唱した。鷹觜さんは終演のあいさつで「心のどこかに“だっきゃん”はいる。色あせることのない日常を過ごしていきたい。忘れません」と思いを語った。

嶽本さんの写真を背に演奏するAshさん

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