“芸術は爆発だ!”でお馴染み岡本太郎作品に歓喜…村山輝星「そういう絵も描いてみたい」

TOKYO MX(地上波9ch)のアート番組「はじめての美術館」(毎月第2・4日曜日 12:29~)。この番組は多摩美術大学卒で芸術家としても活躍する俳優・片桐仁とタレント・村山輝星ちゃんが各地の美術館を巡り、展示作品の楽しみ方を子どもにもわかりやすく紹介します。5月14日(日)の放送では、「岡本太郎記念館」に伺いました。

◆岡本太郎が生前暮らしていた自宅兼アトリエ

今回、片桐と輝星ちゃんがやってきたのは、東京・港区南青山にある岡本太郎記念館。

ここは芸術家・岡本太郎が1996年に亡くなるまで42年間暮らしていた自宅兼アトリエで、彼の作品とともに生前使っていた道具なども見ることができます。

岡本は「太陽の塔」や「明日への神話」といった数多くの代表作とともに、流行語にもなった"芸術は爆発だ!”という名文句でも知られています。その"爆発”とはどんなものなのか、主任研究員・大杉浩司さんの案内のもと探ります。

館内に入ってみると、入ってすぐのところに岡本の作品「縄文人」があり、それを見た片桐は「まさに爆発している感じですね!」と驚きの声。

大杉さんによると、岡本は縄文土器が大好きで、本作はそんな縄文土器を創った縄文人を擬人化したもの。その証左に、本作には足らしきものがついています。

ここで輝星ちゃんが気になった部分に注目する"きらりんポイント”。「本物そっくりに作るのではなく、こうして自分の思いで創るのはどうしてなんですか?」と疑問を投げかけます。

その理由について、大杉さんは「本物とそっくりに描いたり創ったりするのであれば、写真でもいいですよね」と前置きした上で、岡本太郎の作品だからこそ岡本太郎でしかできない作品を作るためと解説。生前、彼は「上手く創らなくてよい、自分が思ったものを、エネルギーをぶつけるように創ればよい」と言っていたそうです。

◆同じような絵が何枚も…その理由とは?

そして、次なる部屋、第1展示室へと足を踏み入れると「うわ~っ、すごい!」と輝星ちゃんは大興奮。

第1展示室は年に数回テーマを変え、時期によって異なるさまざまな作品を見ることができ、現在は7月9日(日)まで企画展「衝動の爪あと」が開催されています。

そこでまず輝星ちゃんの目に留まったのは椅子。実際に座ることができるものの、座面が丸いため座り心地はいまいちでしっくりこないつくりに。というのも、この作品のタイトルは「坐ることを拒否する椅子」。

普通、椅子は人が座ることを拒否しませんが、岡本はあえて人間と対等の椅子を創ったそうで、それを聞いた片桐は「アートですね~。すごいな~」と感心。

続いては絵画「花と樹」。似たような絵画が並んでいますが、それもまた岡本ならでは。

なぜなら、彼は突然「こんな絵が描きたい!」「今、こんな絵を描かなきゃいけない!」と思い立つそうで、すると徐に思いついたイメージを紙に描写。次にそれを小さな油絵に起こし、徐々に大きくしていくため、作品が完成するまでには幾多の過程が残るとか。また、岡本は仕上げた作品を何年後かにまた描き直すこともあったそうです。

「散歩」も同じように似た作品が複数枚展示されており、それらを前に片桐は「絵って完成が難しいですよね。いろいろな画家の絵の完成はどこなのか。それは本人しかわからないですよね」と作品に思いを巡らせます。

ここでクイズを出題。「岡本太郎の作品が完成しているのは、どこでわかる?」という問題。

輝星ちゃんが「結構大雑把に描いているやつと、すごいクッキリ描いているやつと、みたいなことかなぁ!?」と頭を悩ませる一方で、片桐は「額に入れる!」と自信満々に回答。

正解のヒントは、第2展示室に掲げられた完成品と言われている「石と樹」に。

作品の左下を見てみると、そこには岡本さんのサインがあり、正解は「完成品にはサインがある」。しかし、なかには一度サインしたにも関わらず、後にまた描き加えた作品もあるそうです。

◆なぜ成立しているのか…有識者も驚く太陽の塔の秘密

次に鑑賞したのは、岡本の代表作のひとつ「太陽の塔」。これは1970年に開催された「大阪万博」のために制作されたもので、その斬新なデザインは、世界中で話題になりました。しかし、これが完成するまでにも相当な努力があったとか。

本物の「太陽の塔」は約70m。いきなりその大きさの作品を創ることはできないため、最初は小さな石膏の造形を何回も創るところからスタート。現在は石膏像が3体残っていますが、本来はもっと数多く作られていたそうです。

そして、「太陽の塔」には左右に手のような大きな突起物が支えもなく飛び出ていますが、建築家から言わせると、これは実に不思議なことだとか。なぜなら、もしもこの突起物がもう少し突き出ていたら、構造上支えられなかったから。岡本は構造の計算をしていたわけではいないのに、ギリギリ重力に耐えられる絶妙な形を自然と創っていました。

◆岡本が生前使っていたリビング、アトリエに感動!

続いての部屋に訪れると、輝星ちゃんは「うわ~、ビックリした!」と腰を抜かして驚きます。というのも、その部屋には等身大の精巧な岡本太郎人形が。大杉さんによると、ここはリビングで、岡本が応接や打ち合わせなどに使っていた部屋です。

ここで2問目のクイズを出題。「(この部屋の中にあるもので、ひとつだけ)岡本太郎の作品ではないものはどれ?」。

輝星ちゃんは「太郎さんの作品っぽくないものを探せばいいんですね!」と部屋の中を見回し、最終的に「クネクネとか顔が大きく描かれていない、あの木じゃないですか?」と1本の木を指差すと、片桐も「俺もあれだと思う」と同意。

見事2人とも正解。それは「メキシコのお土産品」でした。

岡本はメキシコが大好きで、代表作のひとつ、渋谷にある大きな壁画「明日の神話」はメキシコで描かれたもの。この作品の真ん中には"骸骨”が描かれています。

メキシコでは昔の神殿や遺跡にたくさんの骸骨が張り付けられていて、メキシコ人にとって骸骨は怖いイメージだけではなく"生の象徴”や"生きる象徴”でもあり、そうした感覚が、岡本が"メキシコ好き”な要因のひとつだったのではないかと大杉さんは解説します。

リビングに続いては、いよいよアトリエに。そこにはたくさんの絵が並び「すご~い!」と思わず声を上げる輝星ちゃん。片桐も「さっきまで岡本太郎がいたみたい。ここで描いていたんですね……」と感慨深そうに語ります。

ここでは、多くの描きかけの絵とともに、岡本が実際に使っていたさまざまな筆も展示。そこにはあまり見かけない珍しい筆も多く、岡本は既存の筆ではもの足らず、筆屋に自分の好きな大きさの筆を特注で作らせていたとか。

岡本のアトリエに、輝星ちゃんは「想像していたアトリエとちょっと違う。こんなに広いと思わなかった。やっぱり大きい作品を爆発の気持ちで描くんだったら、こんなに大きい空間が必要だろうなって思います」と率直な印象を語ります。

◆多くの"爆発”に触れ、輝星ちゃんは…

最後は庭へ。ここにも「坐ることを拒否する椅子」をはじめ、さまざまな作品があり、どれも触ることが可能。そんななか、作品を前にした片桐が「この作品だけ他と違う感じが…」と感想を漏らすと、ここで最後のクイズが出題。「(岡本太郎が)スキーに行ったときに思いついた、この作品。何を表現したもの?」。

輝星ちゃんは「スキーだって言われたら、もう雪山にしか見えない」とつぶやきます。山が"5つ”あるのがこの作品のポイントで、正解はタイトルでもある「足」。

岡本はスキーが大好きでよく行っていたそうで、ある日骨折してしまい、ギブスをした自身の足を見ているうちにこの作品を思いついたそうです。

多くの岡本作品に触れ、片桐が「爆発していたね~」と感想を語ると、輝星ちゃんも「爆発をいっぱい見ましたね!」と笑顔。そして、「すごい絵を描くから、(太郎さんは)あまり普通の人っていうイメージがないけど、人の持つ感情を作品に入れ込んでいる人なんだなっていうのは思いました」と語ります。

片桐から、今回の体験を経て自分の作品に変化が生まれるか聞かれ「そういう絵も描いてみたいですね。自分の爆発する日が来るかもしれない」と輝星ちゃん。さらには「感情の爆発を、うまく描こうとしないで、自分の伝えたいところを頑張って描こうと思います」と話していました。

館内を巡った後には、ミュージアムショップへ。片桐が「グッズがすごいよ~」と興奮気味に語ると、輝星ちゃんも興味津々。太陽の塔がデザインされたポーチや骸骨がモチーフのリュック、手拭いなどオシャレなアイテムが数多く並ぶなか、輝星ちゃんのお気に入りは「トランプ」。その独特なデザインに「かっこいいと思います!」と惹き込まれていました。

※開館状況は、岡本太郎記念館の公式サイトでご確認ください。

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<番組概要>
番組名:はじめての美術館
放送日時:毎月第2・4日曜 12:29~12:55<TOKYO MX1>
「エムキャス」でも同時配信
出演者:片桐仁、村山輝星
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/hajimeteno_art/

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