海外メーカーで広がるカンガルーレザー廃止の動き…ミズノのスパイク『モレリア』の開発者にそのことを聞いてみた

6月1日「モレリアの日」に都内で行われたミズノのトークイベント。

モレリアをこよなく愛するミズノブランドアンバサダーの中村憲剛氏とともに登壇したのは、モレリアの“生みの親”である安井敏恭氏だった。

日本が世界に誇る名スパイクの開発秘話については、3年前にQolyで紹介している。

普段こういった場に登場することは滅多にない安井氏。そこでイベント後、「今後のモレリア」に関して気になる点を安井氏にぶつけてみた。

昨今、海外メーカーで広がるカンガルーレザーをスパイクに使わない動きについてだ。

Pumaは『キング』シリーズのアッパーを、カンガルーレザーから非動物性の新素材「K-BETTERレザー」へ変更。Nikeも『ティエンポ』シリーズで追随するとESPNが伝えている。

adidasも今年、『コパ』シリーズのアッパーをカンガルーレザーからカウレザー(牛皮)へ変えた。

ミズノ『モレリア』のアッパーも近い将来、カンガルーレザーではなくなってしまうのだろうか…。安井氏がスパイクの開発者として語ってくれた。

「開発の立場から言うと、世の中の流れに合わせていく…世の中が変わっていくのにミズノの商品は変わらないというのはまた別の話です。

なぜモレリアが38年も続いているかと言えば、やはりその時々のマーケットの動きに対して、少しずつ修正などを施し、そこに合わせてきたからこそ続いているわけです。もしも本当に『天然皮革でなくてもいいね』といった流れになれば、そちらへ行かざるを得なくなるというのはあると思います。

ただ、サステナブルということを考えた時に、天然皮革がサステナブルではないのかと考えた時に、それは違うんじゃないかと。天然皮革こそサステナブルだと僕は思っているんです。人工皮革は石油からできる部分があるので、そこを石油ではないものから作ろうとしている動きはあるんですけど、現時点でわかりやすく言ったら、(僕らは)肉を食べて、皮を使っているわけです。

そういう意味からすると、サステナブルではあると思うので、天然皮革がなくなるということはないと思うんですけど…とはいえ、色々な問題がありますからね。カンガルーは放牧みたいなこともできないですし、自然のものなのでなかなか難しい問題はあるんですけど。

今の流れでいくと、サステナブルというところで考えたらやっぱり天然皮革というのはなくならないと、僕は今のところ思っています」

近年、オーストラリアではカンガルーが増えすぎ、現地では害獣として処理されていることが伝えられている。

「駆除しなければ生態系が維持できない」とも言われる中で、カンガルーレザーを廃止することが果たして“サステナブル”(持続可能)なのか―。

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ただ、日本メーカーにとって海外のマーケットが今後より一層重要になってくることも間違いないだけに、ミズノと『モレリア』の決断はいかに。Qolyとしても引き続き注目していきたい。

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