京アニ事件公判、検察側「完全責任能力」主張へ 被告人質問は異例10日間予定

青葉真司被告(2019年7月、京都府宇治市内)

 36人が死亡した京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件で、殺人など五つの罪で起訴された青葉真司被告(45)の裁判員裁判について、検察側が完全責任能力があったと主張する方針であることが10日、関係者への取材で分かった。青葉被告本人が法廷の場で質疑に答える「被告人質問」は計10日間を予定。通常は1回で終わる検察官の論告と、弁護人による弁論をそれぞれ複数行う計画もあり、異例の審理となりそうだ。

 京都地裁はこれまでに、初公判は9月5日、判決は来年1月25日に指定したと明らかにしていた。

 関係者によると、公判は予備日を除いて計25回開かれる見通し。午前10時半からの開廷を基本とし、午後4時までに終了する。被告人質問は9月上旬~下旬に7回、10月中旬に2回、11月下旬に1回それぞれ予定されている。遺族らが直接質問する機会もあるとみられ、青葉被告が動機や経緯などをどのように説明するかが注目される。

 主な争点は刑事責任能力の有無や程度になるとみられる。検察官と弁護人がそれぞれの立場から意見を述べる論告と弁論は通常1回のみで結審するが、青葉被告の公判では責任能力に関する「中間論告」「中間弁論」を11月上旬に計画。12月上旬に最終的な論告と弁論を行った後、判決を迎えるという。

 京都地検は今月10日、遺族ら向けの説明会を開き、こうしたスケジュールを伝えた。被害者参加制度を利用して意見を述べる仕組みなどについても説明したとみられる。

 起訴状によると、青葉被告は2019年7月18日午前10時半ごろ、京アニ第1スタジオに侵入。ガソリンをまいて放火して全焼させ、屋内にいた社員36人を殺害、32人に重軽傷を負わせたとしている。

 青葉被告は自らも重度のやけどを負い、治療を経て京都府警が20年5月に逮捕した。動機に不可解な面もあり、京都地検は事件当時の精神状態を調べるため同6月から半年間の鑑定留置を実施し、12月に起訴した。その後、弁護側による請求で2度目の精神鑑定が行われ、昨年3月までに終了した。

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