【第2回WUBS】東海大が初戦で対峙するNCCU(国立政治大/チャイニーズ・タイペイ)は相当厄介な強豪

8月10日(木)から13日(日)にかけて、世界の強豪8大学が国立代々木競技場第二体育館に集い、王座を目指して激突する第2回WUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ)。この大会で、日本から第74回全日本大学バスケットボール選手権大会は(インカレ)チャンピオンの肩書きを背負って出場する東海大が最初に対戦するのは、日本と同じ極東の朋友、チャイニーズ・タイペイからやってくる国立政治大学グリフィンズ(以下NCCU[エヌ・シー・シー・ユー]と記述=National Chengchi Universityの略)と発表された。

両チームは昨年もWUBSで対戦し、そのときは東海大が90-74で勝利している。しかしその後のNCCUの戦績や個々のプレーヤーの活躍を見ると、昨年と同じような展開にはならない可能性が非常に高いと感じられる。いや、インカレ王者として臨む東海大としても、相当厳しい相手ではなかろうか。いったいどのようなチームなのか、少し深堀りして紹介してみたい。

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チャイニーズ・タイペイの大学界で3年連続王座の強豪NCCU

チャイニーズ・タイペイは日本の最西端である与那国島から海を隔てて約111kmしか離れていない。親日家や日本を複数回訪れる人が多いと言われ、かつて50年間にわたり日本が統治した時期があることから、高齢な人々の中には日本語を話す人も多いと言われる。そのためこれまでに、バスケットボール界においても盛んな交流が行われてきた。初代FIBA事務総長の名を冠して1977年に始まったウィリアム・ジョーンズカップ(毎年台北で開催、直近3大会はコロナ禍で開催中止)への日本代表男女チームの参加は友好の象徴とも言えるだろう。日本にとっては非常になじみ深い地域だ。

男子代表の状況を見ると、FIBA世界ランキングでは日本の36位に対しチャイニーズ・タイペイは69位。今夏のワールドカップに向けたアジア地区予選でも、点差を開けて日本が2連勝している。しかし代表活動でも学生を含め若手に機会を与えて強化に取り組んでいるし、現地事情としては複数のプロリーグが混在するなど、バスケットボール界の活性化が急激に進んでいる状況だ。

FIBAワールドカップ2023アジア地区予選の対中国第2戦でのチーム写真。前列右端の#1リン ヤンティン、その隣の#7ユー アイジェ、その後ろの#15チャン チェンヤはNCCUのメンバーとして昨夏のWUBSで来日したプレーヤーだ(写真/©FIBA.WC2023)

2020年にはあらたに創設されたP.LEAGUE+というプロリーグが開幕。今年日本で行われたEASL(East Asia Super League)に台北富邦ブレーブスが参戦したことや、高雄スティーラーズが元NBAのジェレミー・リンを獲得したことなどで、世界的な知名度を獲得した。はた目には少し前の日本の状況が目に浮かぶような環境で、間違いなく急速な発展の波が押し寄せている。

そのような環境下でWUBSに2年連続出場を果たすNCCUは、近年有能なタレントを輩出するとともに大学バスケットボール界のトップに君臨している大学だ。ファンからはグリフィンズという正式なニックネームのほかに、しばしば政大雄鷹(Zhengda Eagles)とも呼ばれている。創部は2017年と歴史としてはまだ若いが、チャイニーズ・タイペイの大学年間王座を決めるUBA(University Basketball League)では3連覇中であり、2021年から夏場に行われているカップ戦の王輝盃(Wang Hui Cup)でも2連覇を達成した。

ヘッドコーチを務めるチェン ツーウェイ(陳 子威)は、NCCUグリフィンズの歴史に残る初のUBA王座にとどまらず3連覇でダイナスティーを作り上げたが、コーチとしての実績はそれだけではない。国立台湾師範大でアシスタントを務めていた当時に、やはりUBAでチーム3連覇に貢献している。

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昨年のWUBSより。緊迫した表情でプレーヤーに指示を出すNCCUのチェン ツーウェイHC(写真/©WUBS)

\--{成長著しいチャイニーズ・タイペイ代表ユー アイジェ、U19セネガル代表“ビッグ・モー”に注目}--

成長著しいチャイニーズ・タイペイ代表ユー アイジェ、U19セネガル代表“ビッグ・モー”に注目
P.LEAGUE+の2022年のドラフトを見ると、1位指名となったチャン チェンヤ(張 鎮衛/桃園璞園パイロッツ)、4位指名のアムディ・ジェン(丁恩迪=/桃園璞園パイロッツ)がNCCU出身。このうちチャンはWUBSでも活躍したプレーヤーで、東海大との試合で序盤からすいすいと得点を重ねていたので覚えているファンも多いのではないだろうか。チャンはチャイニーズ・タイペイ代表としてFIBAワールドカップ2023アジア地区予選にも出場しており、日本戦を含む3試合で平均19.6分プレーして3.0得点、2.3リバウンド、0.7アシストのアベレージを残していた。

昨年のWUBSでは上記のチャンとともに、やはりワールドカップ予選に出場したリン イェンティン(林 彥廷)、“ビッグ・モー”のニックネームを持つセネガルからの留学生ムハマド・ラミン・バイェ(莫巴耶)らが主軸だった。バイェは2019年にU19セネガル代表としてFIBA U19ワールドカップに出場した経歴を持つ身長208cmのビッグマンで、バスケットボールの有力インサイダーとして知られるアダム・ザゴリアのブログによれば、ルイビル大やラトガーズ大などアメリカNCAAディビジョン1の有力大学からもオファーを受けたタレントだ。

昨年のWUBSでのペリタハラパン大戦で強烈なダンクをぶち込むムハマド・ラミン・バイェ。UBAで1シーズンを過ごして来日する今年は、チームともさらにフィットしていっそうパワフルなプレーを期待できるだろう(写真/©WUBS)

昨年のNCCUは初戦で東海大に敗れた後、2日目にもアテネオ・デ・マニラ大(フィリピン=WUBS初代王者)に78-88で黒星を喫したが、3日目にペリタハラパン大を91-72で下して3位に入った。二つの敗戦では、どちらも序盤から中盤にかけてリードを奪いながら、第4Qに失速して逆転負けという流れ。東海大戦では65-62とリードして迎えた第4Qが9-28、アテネオ・デ・マニラ大戦では64-57のスコアから最後の10分で14-31と大量失点を喫した。このデータからは、40分間戦い切ることが徹底できなかった印象はぬぐえない。しかしこの段階で海外の強豪相手に競った経験は、その後のUBAにおける3連覇達成で報われた。

さて、今回来日するグリフィンズはどんなプレーを見せるだろうか。この時期、チームにはまだ卒業直前(チャイニーズ・タイペイでは9月が新学期のスタート)のリンが登録される可能性がありそうだが、昨年のチャンのようにプレーするかどうかは一つのポイントかもしれない。ただ、リンの去就に関わらず、今回の来日チームは昨年以上のポテンシャルを持ったチームになると思われる。

注目プレーヤーの一人は、今年最上級生となるガードのユー アイジェ(游艾喆)だ。UBA2022-23シーズンにおいて、NCCUのガードの中ではリン(平均11.5得点、3.9アシスト)が大いにリーダーシップを発揮したのは間違いないが、ユーは平均7.5アシスト、3.4スティールがともにUBAトップの好成績で、リンが故障離脱となったUBAファイナルでもMVPに選出される活躍を披露した。ユーは得点でもアベレージを2桁に乗せており(平均10.1)、リーグ4連覇を目指す2023-24シーズンにもNCCUに欠かせない存在だ。彼もまた、チャン、リンとともにワールドカップアジア地区予選のチャイニーズ・タイペイ代表に名を連ねていたことも忘れてはいけない。彼は3試合で平均5.7得点、1.0リバウンド、1.3アシストのアベレージを残していた。

FIBAワールドカップ2023アジア地区予選の日本戦でテーブス海のドライブをブロックに行く#7ユー・アイジェ(写真/©FIBA.WC2023)

フロントラインでは、得点とリバウンドの2部門でリーグ5位(18.9得点、11.5リバウンド)、2.3ブロックがリーグ2位だったバイェを、どのチームも警戒すべきだろう。ここに、昨シーズンの出場が6試合にとどまった身長213cmのゲイブリエル・ウーウォア(高布瑞)がフルに出場できるような状態だと、かなりな破壊力が計算できる。ウーウォアは南スーダン出身の留学生で、その6試合では10.2得点、5.0リバウンドを記録している。また、もう一つ彼について知っておくべきなのは、2020-21シーズンにアメリカNCAAディビジョン1のステッツソン大でプレーした経歴を持っていることだ。そのシーズンには13試合に平均10.0分出場して、平均2.1得点、1.5リバウンドのアベレージだった。

チームとして向上させたい要素の一つには、3Pシューティングがある。昨シーズンはチームとしての成功率が28.4%で、これはUBAの16チーム中9位。平均得点95.1、平均失点61.8ともリーグベストだったNCCUにとって、この項目だけは泣き所と言える成績に終わっているからだ。今年のロスターに関しては現時点で詳細を確認できていないが、新戦力を含めこの項目をいかに向上させてくるか。上記の司令塔ユー、2年生として昨年以上の責任を感じているだろうバイェ、ウーウォアらがシューター陣の力を引き出すことができると、第2回WUBSでは相当厄介な存在であり、真夏の国立代々木競技場第二体育館に旋風を巻き起こす可能性もあるだろう。

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