キャデラックにとって2002年以来、21年ぶりのル・マン挑戦は、3台の『キャデラックVシリーズ.R』全車が完走を果たしたうえに3号車が総合4位、2号車が総合3位表彰台を獲得する上々の結果となった。
6月10~11日に行われた『第91回ル・マン24時間レース』の決勝を戦い終えたキャデラック・レーシングのアール・バンバーとリチャード・ウエストブルックは、チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)が運営する同チームの新型LMDhマシンがレース中に何度もオイル補給を必要としなければ、リードラップでフィニッシュすることができたと考えている。
バンバーとウエストブルック、アレックス・リンの3人は週末にフランス、サルト・サーキットで行われた耐久レースで3位となり、キャデラックにとって初となるル・マン24時間レースの総合表彰台を獲得した。
CGRのもとでWEC世界耐久選手権のフルシーズンを戦っているブルーのキャデラックVシリーズ.Rは比較的問題なく走行を続け、序盤の不運を跳ね返したレンガー・バン・デル・ザンデ/セバスチャン・ブルデー/スコット・ディクソンの“IMSA組”の前でレースを終えている。
決勝レース後、Sportscar365の取材に応じたバンバーは、自分たちが100周年大会で優勝した51号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)と2位トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)のペースに合わせることができたが、オイル補給のためのピットストップで遅れを取ったと語った。
今季デビューしたLMDhカーのキャデラックVシリーズ.Rは、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の開幕戦デイトナ24時間でもアキュラARX-06などに見られた同様の問題に直面したが、これは同シリーズの再生可能燃料に関連していることが判明している。
IMSAはVPレーシング・フューエルズ社の85%再生可能燃料を使用している一方、WECではトタルエナジーズ社が100%再生可能燃料を供給している。チームやメーカーはオイル汚染を軽減するために、さまざまな方法で取り組んでいる。
「ときにはフェラーリやトヨタと互角に戦える時間帯もあったと思うが、つねに互角に戦えるだけの安定感はなかった」とバンバーは述べた。「トヨタはふたたび彼らの経験を見せつけ、僕たちは徐々に離れていった」
「たしかに以前の(WEC)レースよりは近かった」
「ただし、僕たちはピットで停車するたびにオイルを入れ続けなければならず、それが6~10秒のコストとなり、じりじりと離されることになったんだ」
バンバーは、オイルの充填はレースの2回目のストップから始まったと説明した。
「僕らは、それはもう多くのオイルを入れ続けなければならなかったんだ。デイトナならまだしも、ここでは停車するごとに5秒、10秒余計にかかり、それが30回もあったんだ」
「その結果が3分、つまり1周分近くをロスしたことになる。すべてはこの小さなロスで成り立っている。今後もプログラムとして磨き続けるべきものがあるということだ」
■ポルシェやプジョーでも苦しむル・マン。「この成果を誇れると思う」とバンバー
一方、チームメイトのウエストブルックは、このオイル交換のために毎回のピットストップで13~15秒もの時間をロスしていたと推測している。
「ピットストップのたびにオイルを補充して時間をロスしていたが、たった1周遅れでフィニッシュできた。それらを合計するとまさに失ったラップ分になる」
両ドライバーは、スティーブン・ミタス率いるクルーがほぼパーフェクトな走りをしたことをポジティブにとらえている。
「ほんとんど完璧なレースができたと思う」とバンバー。「ウエットコンディションの中で、いい作戦を立てて乗り切った。今年のレースのポイントはあの殺伐とした状況にあったと思う」
「その中で僕たちはなんとか生き残ることができた。ところどころで良いスピードも持っていたが、フェラーリのような一貫した速さはなかった。彼らはとてつもなく速かった」
「プログラムとしてのキャデラック全般について言えば、かなり誇れると思う。僕たちはここでラップをリードしたが、キャデラック・レーシングがル・マンでラップをリードしたのは史上初めてのことだったからね」
「このプログラムにとって、これは大きな意味を持つ。オーバーオールの表彰台を獲得したことは、大きな大きな一歩だと思う。全体的に見れば、とてもポジティブなことだと思うよ」
「ポルシェやプジョーなど、多くのメーカーが挑戦してきたけど、うまくいかなかった。だから、僕たちはこの成果を誇れると思うんだ」
ウエストブルックは、「誰かが僕に『ああ、あれはラッキーだったね』と言ったんだ。あれは運じゃない。何台ものマシンが脱落したのをみれば分かるとおり、プッシュするタイミングと生き残るタイミングを選ぶ必要があったんだ」
「我々は皆、やるべき仕事があった。僕らとしては頭をクリアにして、強い気持ちを持ち続けた。だから3位に値すると思う」
■結果は喜ばしいが「満足はしていない」
CGRのグローバルオペレーション担当ディレクターであるマイク・オガーラはSportscar365に、2台体制でレースを通して「ミスなく」走り、とくに3号車キャデラックが2度のアクシデントという逆境を乗り越えた末に4位となったことを誇りに思うと語った。
「今日私たちは準備ができていることを証明したと思う。私たちにはいくつかの逆境があった」
「(3号車は)自分たちの力ではどうにもならないクラッシュがあった。他にも問題が出てきていたが、その都度解決しただひたすら走り続けて(2号車が)3位になった。レースで戦えることを示した」
「信頼性やピットストップ、すべての手順、これらすべてに満足している」
「ここはインディ500のようなものだ。終わった後、半分はしばらくこの場所で過ごしたいと思い、もう半分は来年のために戻って来ようとする準備ができている」
「今の私はそんな感じだ。もっとうまくやるにはどうすればいいか、どうすればまた戻ってきてライバルをを打ち負かすことができるかを、すでに頭の中でリストアップしているんだ」