茨城・石岡で特定外来生物「キョン」確認 定着懸念 千葉から流入か

石岡市八郷地区の山中に設置されたセンサーカメラが撮影したキョン(市提供)

茨城県石岡市内の山中で昨年12月、シカ科の特定外来生物「キョン」がセンサーカメラで撮影されていたことが13日、県自然博物館(同県坂東市)への取材で分かった。これまで茨城県での生息は確認されていない。隣接する千葉県では大繁殖し、農作物などに被害が出ており、2017年には同県境の神栖市の常陸川大橋で死んでいるのが確認された。同館学芸員は「千葉から来た可能性が極めて高い」と話し、定着防止へ情報収集を進めている。

同館や石岡市によると、センサーカメラでキョンが撮影されたのは、同市八郷地区の山中。地元の猟友会がイノシシを監視するため設置していた。撮影されたのは昨年12月14日夜で、市農政課から画像の提供を受けた県生物多様性センターが同館に確認を依頼した。体の大きさや角があることなどから雄のキョンと判断した。

キョンは体高約50センチで、植物の葉や木の実を主食とする。元は中国南部や台湾に生息するが、国内では千葉・房総半島や東京・伊豆大島で確認されている。いずれも飼育施設から逃げ出し、野生化したとされ、05年から外来生物法による特定外来生物に指定されている。

早ければ生後半年ほどで妊娠し、年間を通して出産するなど極めて繁殖力が強い。農作物や自然植生の食害などを引き起こし、人家の庭に侵入して樹木や花を食べることもある。

千葉県が21年に策定した防除実施計画によると、06年度に約9200頭だったキョンは、生息域を拡大しながら19年度に約4万4千頭に拡大。同年度の捕獲はくくりわなを中心に約5千頭に上った。近年の農作物被害は100万~200万円で推移している。

茨城県内では17年5月、常陸川大橋の橋上で、れき死した雄のキョンが見つかった。その後もキョンとみられる目撃情報が毎年数件、同センターや同館に寄せられていた。

今回、千葉県境から約40~50キロ離れた石岡市内で撮影されたことで、同館の副主任学芸員、後藤優介さん(41)は「(付近で)他にも何頭かいる可能性は十分ある」と説明。「雌が確認されれば要注意。繁殖する可能性がある」と警戒を呼びかける。

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