日本代表の新9番、上田綺世!規格外の点取り屋がエースとなるための理想布陣と「必要なコト」。

前回の代表活動から約3か月。日本代表は6月15日にエルサルバドル、20日にペルーとキリンチャレンジカップを戦う。

今回の代表戦は注目点が多い。システムは基本形の「4-2-3-1」が採用されるのか。それとも、カタールワールドカップで機能した3バックで臨むのか。久々にサムライブルーのシャツを纏う古橋亨梧と旗手怜央はどんなパフォーマンスを見せるのか。そして、初選出の森下龍矢、川村拓夢、川﨑颯太はデビューを飾るのか。

様々なトピックスが存在するが、6月シリーズの最注目ポイントは、絶対的な得点源が不在の「フォワード(以下FW)争い」だと考える。筆者が期待しているのは、得点力に加えて高さと強さがある上田綺世だ。

質の高い動き出しが光るパワーシューター

2022-23シーズンの上田綺世は、所属するベルギー1部のセルクル・ブルッヘでチームトップ、リーグ2位のリーグ戦22ゴールを記録。チームの総得点(63)のうち、約35パーセントをひとりで叩き出す活躍を見せた。

鹿島アントラーズ時代には3シーズン連続でふた桁得点をマークするなど、当時から得点感覚の鋭さは傑出していた。その上田の最大の武器は、質の高い動き出しと日本人離れしたパワーシュートだ。

例えば、上記動画の29秒からのマーカーを一瞬で振り切り、最後は冷静にゴールへ流し込んだ形や、3分33秒からの相手ディフェンスライン裏への抜け出しで決めた形は文字通り真骨頂だ。4分27秒からの振り向きざまに決めてみせたゴラッソは規格外の一撃である。

上田のシュートは振りがスピーディーでボール自体も速く、かつ威力があるため、ゴールキーパーの反応を上回ることができる。特にJリーグ時代はシュートレンジの広さが際立っており、弾丸シュートを幾度となく決めていた。

また、182cmというサイズを生かした競り合いの強さも光る。生粋のポストプレーヤーという訳ではないものの、屈強なフィジカルを生かしてタメを作り、攻撃の起点となる。

事実、カタールワールドカップ直前のテストマッチとなった昨年11月のカナダ戦や今年3月に行われたキリンチャレンジカップのウルグアイ戦では、ポストプレーがとりわけ機能していた。

さらに、後半開始から投入された同キリン杯のコロンビア戦では、76分に守田英正のクロスから打点の高いヘディングでゴールを脅かす。相手キーパーのファインセーブに防がれ、惜しくもネットを揺らせなかったが、可能性を感じさせたシーンだった。

ベルギーの地で大きく成長した上田のライバルとなるのが、浅野拓磨、前田大然、古橋亨梧の3名だ。

快足の持ち主として知られる浅野と前田に関しては、森保一監督の信頼が厚い。

浅野は指揮官がサンフレッチェ広島を率いていた頃から師弟関係にあり、当時から重用してきた存在である。一発を期待できるFWで、試合の流れを変えるジョーカーとしても有用だ。

一方の前田は、抜群のスピードを生かしたアグレッシブなプレスがストロングポイントで、カタールW杯では堅守速攻スタイルのキーマンとしてチームに大きく貢献。ラウンド16のクロアチア戦では先制点をマークし、ゴールでも結果を残した。

快足という共通項を持つ浅野&前田と比べて、上田に近いタイプだと言えるのが、2022-23シーズンのセルティックで大車輪の活躍を披露した古橋である。

スコットランドリーグトップの27ゴールで得点王に輝き、リーグMVPなど 「個人4冠」を達成した古橋は、今ノリにノっているストライカー。左右両足から放たれる正確なシュート、クロスに点で合わせる技術と相手ディフェンダーを混乱させる動き出しは絶品だ。サイズは異なるが(※古橋は170cm)、その特長は上田によく似ている。

それぞれに強みを持つライバルと上田を比較すると、やはり182cmという身長(※6月シリーズのメンバーで180cm超は純粋なFWタイプでは上田のみ)は大きな武器となる。

しかし、クラブシーンでは実績を残している上田も、A代表ではまだ得点がない。ライバルに差をつけるためにも、今の上田にはゴールという結果が何よりも求められる。

充実の2列目の最適解は?

抜群のシュートセンスを誇る上田綺世を生かすには、ともにプレーするアタッカーとの“好連係”がカギを握る。では、現在の日本代表が基本形とする「4-2-3-1」で上田が輝くには、どのような2列目の組み合わせが最適なのだろうか。

本題に入る前に、上田が日本代表として出場した過去5試合(※昨年9月のエクアドル戦から今年3月のコロンビア戦の間)で、ともに起用されたアタッカーたちを振り返りたい。上田と共演した時間をまとめると以下の通りとなる。

・堂安律(主に右サイドハーフ:計178分)
・相馬勇紀(主に左サイドハーフ:計124分)
・鎌田大地(トップ下/ボランチ:計116分)
・伊東純也(主に右サイドハーフ/2トップ:計94分)
・南野拓実(トップ下:計62分)※6月シリーズは選外
・三笘薫(主に左サイドハーフ:計59分)
・久保建英(トップ下:計37分)
・西村拓真(トップ下:計34分)※6月シリーズは選外
・浅野拓磨(2トップ:計18分)
・中村敬斗(左サイドハーフ:計5分)

上田との共演時間が100分を超えたのは堂安、相馬、鎌田の3名。相馬は3月のキリンチャレンジカップでは選外だったが、カタールワールドカップ直前のテストマッチ(カナダ戦)および本大会のコスタリカ戦で長時間出場したことが反映されている。

一方で、現在の日本代表における看板選手の三笘および久保とはさほどプレーできていない。カタールW杯以前の三笘は確固たる主力ではなく、本大会でもジョーカーとして起用された。W杯後のプレミアリーグでハイパフォーマンスを連発し、代表での地位を大きく向上させている。つまり、W杯以前と以後で状況が変わったということだ。

所属するレアル・ソシエダで攻撃の中心を担う久保は、不運に泣かされた。3月のキリンチャレンジカップでは、体調面の理由から24日のウルグアイ戦はベンチ外に。続く28日のコロンビア戦では59分にピッチへ登場すると、アディショナルタイム含む約40分の出場時間で積極的な仕掛けとキレのある動きを随所で披露。とはいえ、本人も意気込んでいた3月の代表戦では、思うようにプレータイムを伸ばせなかった。

上記を踏まえ、上田を生かすための理想的な布陣は上図だと考える。

前提として、今やワールドクラスのタレントとなりつつある三笘と久保はやはり外せない。伊東や堂安など打開力に優れた選手は他にもいるが、それぞれブライトン、レアル・ソシエダの躍進をけん引した両名を軸に攻撃を組み立てるべきだ。

また、前述の通り三笘と久保は最近のA代表において上田との共演が少ないため、長時間ともにプレーしてコンビネーションを高める必要があるだろう。この点については、次のセクションで詳しく述べることにする。

日本が世界に誇る両翼を操るトップ下には、鎌田を推したい。気の利いたプレーとパスでポゼッションの潤滑油となり、受け手にも出し手にもなれる鎌田は、現在のサムライブルーで希少価値が非常に高いプレーヤーだ。

その鎌田はプレースタイル的に見ても、途中出場で流れを変えるというよりは、スタメンで起用した方が持ち味を生かせる。90分を通してゲームに関与しながら、流れの中で判断力やパスセンスといった強みを発揮するタイプだからだ。能力の高さからして、当然ながら現チームの中心にならなければならない存在である。

森保一監督はこれまで、鎌田をボランチでも起用してきた。だが、今回の招集メンバーには中盤センターを主戦場とする選手が多数(遠藤航、守田英正ら計6名)いることを踏まえても、「4-2-3-1」が採用されるのであれば、鎌田をトップ下で固定すると見る。鋭い動き出しを得意とする上田をフィニッシュに専念させるためにも、鎌田とのホットライン開通に期待を寄せたい。

森保監督に求めたい“我慢の采配”

前項では、基本形の「4-2-3-1」で上田綺世が輝く方策を探った。筆者は6月シリーズでの上田のA代表初ゴールを待ちわびているが、それと同じく実現してほしいことがある。チームを率いる森保一監督の“我慢の采配”だ。

現在の日本代表のタレント力は歴代最高といっても過言ではない。それゆえ、森保監督は様々な組み合わせを模索しているが、逆にチームの骨格が定まりづらい一面もあるのではないか。

確かに、様々なタレントをチームに組み込み、「特定の選手に依存することなく、誰が出ても機能する」というのは極めて理想的である。代表はケガなどの理由でいつも同じメンバーを呼べる訳ではなく、各人のコンディションにバラつきもある。

しかし、ある程度メンバーを固定して戦わなければ、選手たちも持っている力を存分に発揮できないはずだ。

特に攻撃陣は、コンビネーションがモノを言う部分が大きい。代表活動はスパンが短く、限られた時間の中で崩しのイメージを共有していかなければならない。動き出しが武器の上田と古橋亨梧は出し手との連係がとりわけ重要である。

よって、両名の持ち味を生かすには、メンバーを固定して根気強く戦うほかない。「ローマは一日にして成らず」という有名なことわざがあるが、同じく「連係は一日にして成らず」なのである。

仮に上田をサムライブルーの得点源として開花させたいのであれば、6月の2試合はどちらも上田をスタメンで起用し、結果にかかわらず最低でも60~70分のプレータイムを与えたい。実現は当人のコンディションにもよるが、このくらいの覚悟が必要だと考える。もちろん、三笘薫および久保建英と長時間プレーさせるべきだ。

上田にとって追い風なのは、東京オリンピックを戦ったメンバーが今回の攻撃陣に多いことだ。三笘&久保という二枚看板はもちろん、堂安律や相馬勇紀もおり、(2列目での起用はおそらくないと思われるが)前田大然と旗手怜央も招集されている。

特に上田と三笘は、金メダルを獲得したユニバーシアード2019でともにプレーしており(※今回の代表選手では旗手と森下龍矢も優勝メンバーだった)、当時から信頼関係を築いてきた。

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三笘のパスまたはクロスに上田が合わせてA代表初ゴールを決める――。こんなドラマチックな展開が見られるかどうかは、森保監督の采配に懸かっている。

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