形が不ぞろいだから安くできた!“和牛の切り落とし”の人気ジワリ 背景に史上まれにみる円安が

これまで高級品と位置付けられてきた和牛がお手頃になってきています。いま、注目を集めているのが「和牛の切り落とし」。お得に高級なお肉にありつけるとして、その人気が高まっているのです。

<井手春希キャスター>

「いただきます。肉々しいです。脂もジューシーで、でもスッキリとした脂身でおいしいですね」

焼き肉店「炭火焼肉中込精肉店」(静岡市葵区)では、平日限定で「黒毛和牛」のランチセットを提供しています。

<井手キャスター>

「このランチセットはおいくらですか?」

<炭火焼肉 中込精肉店 店主 中込孝晴さん>

「ご飯とスープとお肉やドリンクもついて1350円です」

<井手キャスター>

「えぇこんなにあって1350円」

これまで「高嶺の花」とされてきた高級な和牛をリーズナブルに提供できるその理由とは…。

<炭火焼肉 中込精肉店 店主 中込孝晴さん>

「(黒毛和牛の)加工段階で出た切り落としを使っている」

<井手キャスター>

「なるほど。切り落としだからお得なんですね」

牛肉を消費者向けにカットする際、どうしても商品化しづらい端っこの部分が出てしまいます。このお肉が「切り落とし」。形が不ぞろいという理由で通常のメニューでは、出せない切り落としを低価格で提供しているんです。この「切り落とし」がいま一気に注目を浴びる存在に。

独立行政法人の調査によりますと、2023年度上半期は半分近い卸業者が高級部位「サーロイン」の販売を減少させるのに対し、約4割の業者がリーズナブルな切り落としの販売を増やしていることがわかりました。「低価格志向の強まり」があると分析しています。

いまは史上まれにみる円安傾向で、価格が上昇している輸入牛肉と和牛の価格差が縮まっています。こうした状況は和牛業界にとって絶好のチャンスです。

静岡県掛川市の畜産農家です。8棟の牛舎を構え、いわゆる黒毛和牛をメインに約300頭の和牛を飼育していますが、切り落としの人気はシェア拡大の突破口につながると期待しています。

<遠山畜産 遠山裕丞社長>

「和牛は高いというイメージがある中で、切り落とし肉からまず手に取ってもらえることには期待を感じている。これから輸入肉が高くなって、和牛が手に取りやすくなる中で、そこをキッカケに色々な部位を食べてもらえるようになればいいなと思う」

私たちにとって比較的、手に取りやすい和牛の切り落とし。おいしくてリーズナブルなこの商品は、畜産業界の救世主となれるのでしょうか。

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