「川端康成の小説に出てくることを知っていただきたい」『伊豆の踊子』ゆかりの宿が“まちの図書館”に

6月14日は日本人初のノーベル文学賞を受賞した川端康成の誕生日です。124回目の生誕記念日の6月14日、川端の代表作「伊豆の踊子」に登場する静岡県下田市内の宿が図書館になりました。

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旅館にできた図書スペースを紹介する山口さん

<柴田寛人記者>

「『甲州屋という木賃宿は、下田の北口を入ると…』。この「伊豆の踊子」に出てくる木賃宿。私がいるこのゲストハウスが川端康成が泊まったとされ、作品の舞台になった宿です」

下田の市街地にある「ゲストハウス甲州屋」。「伊豆の踊子」に登場し、踊り子たちが宿泊した宿「甲州屋」が前身で、昔ながらの和室は川端が伊豆を旅した大正時代の雰囲気を残します。

川端康成の124回目の生誕記念日の6月14日、この宿が“図書館”になりました。

<ゲストハウス甲州屋 山口久恵さん>

「こちらが図書スペースになります。お客様がお食事をしたり、本を読んだり、リラックスするスペースです。ゆっくりしていただきながら、本を読んでいただきたい」

「ゲストハウス甲州屋」の共有スペースに置かれた約30冊の本は、下田市立図書館から借り受けたもの。下田市が2023年から進めている「まちじゅう図書館」の取り組みの一環です。

下田市の市立図書館は館内が手狭で、10万冊の蔵書のうち、一般の人がすぐ手に取れる開架スペースには半分の5万冊しか置けないことが悩みでした。そこで、市は2023年4月から市内の店舗や民間の施設に蔵書の一部を貸し出し、市民や観光客に本に触れてもらう機会を増やす取り組み「まちじゅう図書館」を始めました。

<下田市教育委員会 山田貞己教育長>

「広範囲にわたる下田市ですので、同じような図書館が提供できればうれしい。1つでも2つでも協力してもらえるところがあれば、ありがたいです」

ゲストハウス甲州屋は、市内3つ目の協力店として手を挙げ、6月14日、女将が館長に任命されました。

<ゲストハウス甲州屋 女将 山口久恵さん>

「海外の方とか、県外の方もいらっしゃいますので、川端康成の小説に出てくるというのを知っていただきたいのと、下田の歴史に触れていただく場所になればと思う」

宿の営業日の午前10時から午後3時が開館時間で、本の貸し出しはしていませんが、開館時間内であれば宿泊客でなくても好きなだけ本を読めます。

リゾート地で働きながら休暇をとる「ワーケーションのまち」としても認知拡大を目指す下田市。市は30か所の「まちの図書館」をつくり、新しい伊豆半島の楽しみ方を提案したいとしています。

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