長崎原爆の体験記調査 7月にも着手 厚労省が方針 「黒い雨」で県と市が要望 被爆体験者の救済巡り

議員懇談会で被爆体験者の早期救済を訴える平野相談役(右端)ら=衆院第2議員会館

 国の指定地域外で長崎原爆に遭い、被爆者と認められていない「被爆体験者」の救済を巡り、放射性物質を含む「黒い雨」に関する情報が含まれている可能性があるとして、長崎県や長崎市が国に要望していた国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館所蔵の被爆体験記の調査分析について、厚生労働省は14日、7月にも着手する方針を示した。
 野党の国会議員有志らでつくる「被爆者問題議員懇談会」が同日、東京都内で開いた会合で、厚労省の担当者が明らかにした。
 被爆体験者に関する県専門家会議の報告書は「黒い雨」に遭った体験者を被爆者認定する妥当性を認めたが、同省が1月に示した見解では、過去の訴訟で「降雨の客観的記録はない」とする判決が確定しているとして被爆者認定を否定。
 一方、県市は2月、被爆地域以外での「黒い雨」などに関する情報が含まれている可能性があるとし、被爆体験記と米原爆傷害調査委員会(ABCC)が実施した研究結果資料の調査分析を国に求めていた。同省によると、ABCCの資料については調査方法や開始時期も含め検討中という。
 会合には、多・長被爆体験者協議会の山内武会長や全国被爆体験者協議会の平野伸人相談役ら関係者が出席。会合後、山内会長は「スピード感をもって取り組み、早期救済につなげてほしい」と話した。

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