ロサンゼルスCCに仕掛けられたワナ 優勝スコアは5アンダー?

今年の全米オープンのピンフラッグ(撮影/服部謙二郎)

◇メジャー第3戦◇全米オープン 事前(14日)◇ロサンゼルスCC(カリフォルニア州)◇7423yd(パー70)

過去の全米オープンでは全米ゴルフ協会(USGA)の仕掛けたワナに、多くの選手が果敢に挑み、打ちのめされてきた。ロースコアでの優勝が多く、ここ10年で言えば2013年メリオンGCのジャスティン・ローズ、2018年シネコックヒルズのブルックス・ケプカがともに通算1オーバー。過去3年は2020年ウィングドフットGCのブライソン・デシャンボー、2021年トーリパインズGCのジョン・ラーム、2022年ザ・カントリークラブのフィッツ・パトリックがすべて6アンダー。なかなか2けたアンダーに届いていない。

今回、都心のど真ん中のロサンゼルスCCでUSGAはどんなワナを仕掛けたのか? 米国内でもその“セッティングの妙”が話題になっているが、練習ラウンドを3日間見た感じでは、正直優勝スコアが想像しづらかった。

13番のラフから…どう打てばいいのか?(撮影/服部謙二郎)

コースはメジャーにすれば簡単な部分と、難しい部分が入り乱れているように見えた。池がなく、フェアウェイ幅もそこまで狭くない。グリーンもカチコチというわけではない。さらに予選ラウンドは雨もパラつき、風もない予報だからボールはある程度止まるはずだ。一方で、長いホールが多く、フェアウェイも傾斜している。ラフに入るとブッシュが待ち構え、ライ次第で“出すだけ”になる。グリーンを外せば、グリーン周りのバミューダ芝はフェースに絡みつき、簡単に寄せ切れない。

21年大会覇者ジョン・ラームは会見で「たくさんのバーディを見られるかもしれないが、1ホールで大きく叩く可能性もある」と、スコアボードに「〇」と「△」が並ぶことを予想した。松山英樹に優勝スコアを尋ねても「どれぐらいになると思います? 他の選手に聞いてくださいよ」と逆質問されるほど。スコアメークにあたっての不確定要素が多すぎて、世界のトップランカーをしてもスコアを想像しづらい。何がそこまで選手を惑わせるだろうか?

石川遼いわく、“ニラ”のような草がグリーン周りに生い茂っている(撮影/中野義昌)

理由の1つには“距離のメリハリ”が考えられる。今回のUSオープンはただ長いだけじゃないのだ。ロサンゼルスCCの総距離7423ydは、17年エリンヒルズの7845ydや15年チェンバーズベイの7695yd、21年トーリーパインズ・サウスCの7676ydと数値的に長すぎはしないが、松山が「飛ぶ人が有利でしょうね」とボヤくように、おそらく“長く感じさせる”のだろう。

つまり長短のメリハリが非常に上手い。パー3でも11番290ydと異常な長さもあれば、15番124ydなどはピン位置次第で80ydに化ける。また1オンが狙えるパー4(6番323yd)もあれば、14番パー5は623ydとやたら長い。上がり3ホールはUSオープン史上最も長い計1554ydで、16番542yd、17番520yd、18番492ydというパー4が連続するタフさ。長短を交互に繰り返し、最後にガツンと長いホールが続く。

やはり彼らのようなパワーゴルファー優位なのか(撮影/中野義昌)

さらにいえば、ロサンゼルスCCは高低も入ってくる。ビバリーヒルズの丘陵地とあって、フラットなホールはほぼない。まさに“3Dのゴルフ場”で、ティイングエリアから打ち上げ、打ち下ろしが多く、フェアウェイも左右に傾斜。ティショットの狙いどころによっては、着弾してからラフまで流される。松山も「(フェアウェイは)狭いところと広いところ、両方ある。飛べば飛ぶほど傾斜で前に行くけど、転がり過ぎるとラフに行く可能性もある。(コース攻略は)マネジメント次第じゃないでしょうかね」と攻め方に注意を払っていた。

スコアの組み立て方も難しい。パー70の内訳は、通常のパー72よりパー5が2つでなく1つ少なく、パー3が1つ多くて5つある。前半アウトにパー3が3つあり、1オン可能なパー4の6番、長いパー3の7番、パー5の8番、そして9番がパー3という変則的な流れ。USGAのチーフオフィサーであるジョン・ボーデンハマー氏によれば、「6番はヤーデージブックでは330ydと書いていますが、ティイングエリアからグリーンを直線で結ぶと270yd。つまり次の7番パー3の280ydより短いんです。6番と7番はコンビネーションで考えています」と、距離とパーの設定にも工夫を凝らす模様。ジョン・ラームは「今までのUSオープンにないような流れがあるから面白いよね」と言うが、リズムを作れず終わってしまう選手もいるだろう。ちなみに、松山は短い6番パー4で「ドライバーは絶対使いません」と話していたが、ブルックス・ケプカやダスティン・ジョンソンは練習ラウンドでドライバーを試した。選手によって攻め方が変わるホールがありそうで、見る側は楽しめるのではないか。

7番でティショットを打つマキロイ。優勝は「5、6アンダー」と予測した(撮影/服部謙二郎)

4日間を終えたとき、優勝スコアはどうなっているのか? 優勝候補のひとりロリー・マキロイは「5、6アンダーぐらいじゃないか」と予想したが、果たして…。(カリフォルニア州ロサンゼルス/服部謙二郎)

18番ホール脇を歩くギャラリー(撮影/服部謙二郎)
1オン可能な6番パー4でグリーンを眺めるギャラリー(撮影/服部謙二郎)

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