就寝0時、仮眠4時間…過酷すぎる近鉄の駅員体験、なぜ企画?

深夜12時に就寝し、仮眠4時間。朝4時半に起床して業務をスタートする・・・という駅員の1日が体験できる小学生向けの夏休み特別企画『駅業務体験と駅舎仮眠(宿泊)体験』ツアーの実施が6月13日に発表され、「本格的すぎる」とSNS上で話題となった。

「近鉄」が企画した『駅業務体験と駅舎仮眠(宿泊)体験』ツアー(近畿日本鉄道提供)

『きんてつ 駅のお仕事体験2日間 in 大和上市駅』と題したツアーは、小学4~6年生が対象。参加者は近鉄吉野線の大和上市駅の「1日駅長」となり、改札業務や終業・始業点検、清掃業務に加え、夜間にしか見られない列車の開放作業や駅舎の仮眠体験、車両の運転台見学など、普段なら体験できない盛りだくさんな内容となっている。

このツアーを企画したのは「近鉄」の愛称で親しまれている大阪の鉄道会社「近畿日本鉄道」(本社:大阪市天王寺区)。「小学生だったら行ってみたい」「リアルだ」といった肯定的な意見の一方で、夕朝食抜き・入浴なし、参加費は子ども1人3万円・・・となかなかハードな内容に「過酷すぎでは?」と、賛否両論が巻き起こっている。

なぜこのようなツアーを企画したのか? 同社の広報・杉山正樹さんに詳しい話を聞いた。

■ 「あまり構えず、できることを楽しんで体験してほしい」

──小学生向けにも関わらず深夜12時就寝、仮眠4時間など、かなり本格的な内容に驚きました。こちらを企画されたきっかけを教えてください。

こちらは企画担当者が読んだ「新聞のコラム」がきっかけでした。そこには、筆者の方が子どもの頃、駅で働く人が夜に仮眠室で寝る姿を想像していたということが書かれていたそうで、「これを体験してもらう場が作れたら」と思い、企画したとのことです。

──思い出に寄り添う企画だったんですね。このような企画は毎年おこなわれているのでしょうか?

今回が初めての試みです。これまで「電車の切り離し体験」などはふるさと納税の返礼品などで開催したことがあったのですが、宿泊が伴う企画は今回が初めてです。

ツアー体験場所である「大和上市駅」(近畿日本鉄道提供)

──しかし、今回の体験場所はなぜ「大和上市駅」なのでしょうか? 奈良県の吉野エリアの駅とあってレアな感じがします。

この駅は、駅員が常駐していない田舎ですが、とても風情ある駅です。夏休みの思い出に残る場所になると思い、こちらの駅を選びました。

──確かに夏休みっぽいです。かなり幅広く業務を体験できるようですが、子どもたちにどういったことを学んでもらうことを目的としているのでしょうか? 「少し過酷では?」といった声もあがっていますが・・・。

鉄道に愛着や興味を持ってもらえたらうれしいです。「夜12時に就寝、朝4時の起床」とありますが、子どもたちが楽しんで体験できることを前提にしているので、眠ければ12時より前に就寝してもらうのも、朝4時起きでなくても大丈夫です。

臨機応変に対応できるので、あまり構えずに、できることを楽しんで体験してもらえたらと思います。何より、夏休みに最高の思い出を作って欲しいですね。

6月15日・昼2時から販売開始された『きんてつ 駅のお仕事体験2日間 in 大和上市駅』は、現在キャンセル待ちとなっている。日程は7月29日〜30日、8月19日〜20日の2回開催予定(1泊2日)で、参加できるのは各回1組限定。体験できるのは、小学4年〜6年。料金は子ども3万円、大人1万円。

取材・文/野村真帆

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