【台湾】中銀、政策金利据え置き[金融] 6会合ぶり、引き締め効果を点検

台湾の中央銀行は15日に開いた会合で、政策金利を据え置き、現行の1.875%を維持することを満場一致で決めた。据え置きは2021年12月以来6会合ぶり。最終製品の需要減少を背景に輸出が振るわず、台湾の経済成長が鈍化する中、中銀の楊金龍総裁は記者会見で「金融引き締めの効果と影響を点検する」と強調した。台湾の23年の経済成長率予測値は前年比1.72%に下方修正した。

米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が14日、主要政策金利を据え置くことを決めたことに追随した。中銀は22年3月の会合で、7会合連続で据え置いてきた政策金利を0.25%引き上げて1.375%とすることを決定。同年6月と9月、12月、23年3月にもそれぞれ0.125%引き上げ、政策金利は約7年半ぶりの高水準となっていた。3月時点では、依然としてインフレへの対応が必要だと判断していた。

中央銀行は会合後に発表した文書で、政策金利の据え置きを決めた背景を説明。台湾のインフレが徐々に落ち着き、第4四半期(10~12月)にインフレ率が約2%まで落ち着くとみていることや、台湾経済の成長が従来の予想以上に鈍化すると予測していることを挙げた。既に利上げを5回連続で行い、預金準備率を2回引き上げたことから、今回の会合では現行の政策金利を維持し、楊氏は「金融引き締めの効果と影響を点検することが全体的な経済金融の安定的な発展の助けになる」と説明した。

中銀は、主要経済体の金融引き締めの波及効果が台湾の経済金融に及ぼす影響を引き続き注視し、金融政策を適宜調整するとも説明した。

中央通信社によると、15日の会合を前に、中銀が利上げを見送るとの見方が出ていた。中央大学台湾経済発展研究中心(台経中心)の呉大任教授は、中銀が6月も利上げを続ければ、企業経営や家計への圧力が強まるとして、利上げをしないと予測していた。

一方、台湾政府系研究機関、中央研究院(中研院)の周雨田研究員は、台湾の5月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比2.02%と、前月から0.33ポイント縮小し、21年7月以来22カ月ぶりの低い水準になったことを挙げ「利上げはしないはずで、もしすれば予想外だ」と指摘。ただ、価格の変動幅が大きい野菜と果物、エネルギー価格を除いたコアCPIは高い水準にあり、原油や食糧の価格が上昇すれば、インフレの先行きに影響する恐れがあり、「中銀は第3四半期(7~9月)、第4四半期に利上げする可能性がある」と説明した。

■経済成長率予測は引き下げ

中銀は23年の台湾の経済成長率予測値を前年比1.72%とし、3月時点の予測値(2.21%)から0.49ポイント下方修正した。

中銀は台湾の経済情勢について、新型コロナウイルス感染症の水際対策などが緩和され、今年第1四半期(1~3月)には経済活動が正常化し、民間消費は回復したと指摘。一方で、世界的な景気減速で、企業は在庫消化を続け、台湾の輸出額は減少幅を広げ、民間投資はマイナスに転落したとした。下半期(7~12月)の見通しとしては、民間消費が安定成長を続け、世界景気も回復が見込まれることから、台湾の輸出は少しずつ回復すると予測。その上で、下半期の経済成長率は上半期(1~6月)を上回るとした。

CPIとコアCPIの上昇率は2.24%と2.38%と予測し、3月時点の予測(いずれも2.09%)から引き上げた。下半期は原油など原材料価格は上半期と比べて下がるとみている一方、娯楽サービス費や外食費などは上がるとみている。

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