深夜、橋の欄干にまたがりすすり泣く女性 通りかかった男性が、優しく語りかけ保護 仕事での経験生きる 兵庫・尼崎

橋から飛び降りようとした女性を助け、のじぎく賞を受けた道林唯斗さん=尼崎北署

 橋から飛び降りようとした女性を助けたとして、兵庫県警尼崎北署は12日、放課後等デイサービスの指導員、道林唯斗さん(24)=同県伊丹市=に県の善行賞「のじぎく賞」を伝達した。

 5月中旬の深夜、バイクで帰宅中の道林さんが尼崎市常松町1の甲武橋に差しかかった時、欄干にまたがり、今にも飛び降りそうな20代女性を見かけた。橋の高さは10メートルほどで、下には武庫川が流れている。命を絶とうとしていると確信し、女性の数メートル先でバイクを止めた。

 交通量は少なく、女性がすすり泣く声が聞こえる。「大丈夫ですよ」「こっちに来てください」。刺激しないよう、なるべく落ち着いた口調で諭しながら近づいた。

 数分なだめていると、女性が歩道側に戻ろうとしたため、すかさず肩を支えて下ろした。歩道に座り込み、突っ伏して泣き叫んだ後、女性は静かに語り始めた。上司からパワハラを受けて思い詰めていたことや薬を過剰に摂取したこと。「飛び降りたら、死ぬか、死ななくても骨折して仕事に行かなくても済むかなと思って」

 女性は立ち上がろうとするも体に力が入らず、次第に意識がなくなり、倒れてしまった。道林さんは急いで119番し、救急車が到着するまで女性を見守った。

 道林さんは発達障害のある小中高生らを対象にした施設に勤めており、子どもらが問題を起こしても「だめ」や「するな」など否定する言葉は普段から使わないように心がけている。

 「指導員として優しく同じ目線で接することの大切さを知っていたからこそ冷静に声かけができたのかもしれない」と振り返りつつ、「これからは幸せに生きてくれたら」と話した。(池田大介)

© 株式会社神戸新聞社