藤井七冠も称賛「非常に巧み」 女流王位戦5連覇の里見「細かい駆け引きがあり、充実感あった」

女流王位戦第4局終了後、シリーズを振り返る里見香奈女流王位=7日夜、徳島市内

 将棋の第34期女流王位戦5番勝負(神戸新聞社主催)は、里見香奈女流王位(31)=白玲、清麗、女流王座、倉敷藤花=が伊藤沙恵女流四段(29)を3勝1敗で下し、5期連続、通算9期目の女流王位を獲得して閉幕した。今シリーズは後手番が全対局で向かい飛車を採用。防衛を果たした第4局の後、里見は「似た形にはなったが、細かいところで駆け引きがあり、指していて充実感があった」と総括した。(井原尚基)

 5番勝負は4月26日に兵庫県姫路市で開幕した。伊藤が先手番となった第1局と第3局(福岡県飯塚市)は里見が向かい飛車を選んだ後、伊藤が穴熊を志向。第2局(札幌市)と第4局(徳島市)は先手番の里見がいったん中飛車を選んだ後、

■2八飛と振り戻した。

 第1局で伊藤が勝利した後、里見が3連勝。里見は「今回は攻めていく展開が多かったので、割と気楽に考えられるところはあった。大まかな対策はあったが、途中からは一手一手作りあげていく将棋になったので、局面を考えて積み上げていくところに充実感があった」と振り返る。

 先手番となった2局で採用した飛車の振り戻しは、結果的に対抗形の居飛車側と似た状況となる。振り飛車党として知られる里見は「タイトル戦で指すことによって読みの蓄積になり、今後に生かせることができればという気持ちがあった」と語った。

 女流王位戦5連覇は、清水市代女流七段(54)の9連覇(1998~2006年)に続く記録で、通算9期も清水の14期に続く2位だ。タイトル保持者として防衛戦を戦う機会が多い里見は「あまり執着がなく、負けるときは負けるという気持ちでやっているので、力みにつながっていないのかな」と話しつつ、節目の5連覇について「すごく光栄なこと。女流王位戦は北海道から九州まで対局し、各地の人々の温かさを肌で実感できるので、それが自然と力になっている」と話す。

 将棋を始めたい女性や子どもに対するメッセージを求められると「無理に指すのではなく、楽しく触れていただきたい。好きな勉強法を見つけ、楽しく取り組んでいただけたら伸びしろがあるのかな」と話した里見。7月に始まる清麗戦5番勝負を皮切りに、今後も女流タイトル戦が続く。「体調に気をつけて、いい状態で力を出し切るようにしたい」と誓った。

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 一方の伊藤は、昨年、里見から女流名人を奪って以来、2期目となる女流タイトルの獲得を果たせなかった。第4局の後「各地を回って気持ちよく対局に臨めたのはありがたかったが、実力不足で最終局に行けなかったのは残念」と振り返った。

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■藤井王位「非常に巧み」

 今期女流王位戦5番勝負について藤井聡太王位(20)=竜王、名人、叡王、棋王、王将、棋聖=に聞いた。

 移動中などに日本将棋連盟のアプリで各棋戦を観戦することが多いという藤井王位。里見香奈女流王位が中飛車から振り戻した第2、4局について「前例の少ない、珍しい指し方かと思うんですけど、その中でも里見さんが本当にうまくコツをつかみ、そこから良い形で仕掛けてペースを握った印象がある」と振り返った上で「里見さんが非常に巧みだと感じた」と話した。

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