G7の核抑止正当化、批判を 8月9日の「平和宣言文」起草委員 長崎市に原案修正求める

平和宣言文の原案について意見を交わした起草委員ら=長崎市平野町、長崎原爆資料館

 長崎市は17日、8月9日の平和祈念式典で鈴木史朗市長が読む「平和宣言文」の起草委員会第2回会合で原案を示した。広島で先月開かれた先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)について、市は好意的評価を中心に盛り込んだが、委員からはG7が核抑止力を正当化した点などに対し、批判的な見解も加えるよう意見が相次いだ。
 被爆者の朝長万左男委員は、サミットの核軍縮文書「広島ビジョン」が「核兵器は安全保障に必要だと言っていて、核なき世界への具体的シナリオもない」と問題視。原案は「サミットが良かったという感じにしか響かない」と指摘した。田中重光委員も「サミットに期待したが(結果は)私たち被爆者の願いとは違う」と修正を求めた。
 活水中・高講師の草野十四朗委員は、核兵器削減に向けた交渉の促進や、核兵器禁止条約の批准など、G7へ具体的な要求を盛り込む必要性を提言した。
 原案では、長崎原爆で大やけどを負いながら、核兵器廃絶を訴え続けた被爆者(故人)の体験や言葉を引用。被爆2世の佐藤直子委員はこの被爆者の体験が「被爆者が亡くなるまで苦しめられることを表現する代表的なもの」と評価した上で、原爆の非人道性を訴えるため、生涯にわたり健康被害をもたらす放射線の影響について一層強調するよう求めた。
 原案には憲法9条の堅持や、日本政府の防衛費増額への懸念、原発事故の被災地福島に関する文言はなかったが、複数の委員がこれらを盛り込むよう求めた。
 就任後初めて平和宣言を読む鈴木市長は原案で、両親が被爆者であることに触れ、次世代が担う役割にも言及。委員からは「市長が被爆2世として率直に感じる危機感などを入れると、より強いメッセージになるのではないか」との声もあった。
 起草委員は被爆者や有識者ら15人。今回の意見を踏まえて7月8日の最終会合で修正案を示し、7月末にも取りまとめる。

© 株式会社長崎新聞社