フロア破損でトップ陥落、4戦連続決勝無得点の大湯都史樹「攻めたセットになっていたのも事実」/ SF第5戦

 大湯都史樹(TGM Grand Prix)が最初に“異変”を感じとったのは、オープニングラップに導入されたセーフティカーランが4周目の終わりに明けたときだった。グリップ感が徐々に薄れ、ダウンフォースが感じられなくなっていた。確信に変わったのは、12周目に宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)にパスされる直前。急激に宮田に差を詰められた大湯のマシンは最終コーナーでフラつくと、あっけなくリーダーの座を明け渡してしまった。

 異変の原因を当初タイヤにあると見た大湯はピットインしてタイヤを交換、再びコースインするが症状は改善されない。再度マシンをピットに向け、ガレージに入れると真因が判明する。左サイドのフロアが破損していた。これにより空力を失っていたのだ。

「コーナーでもブレーキングでもフラフラ、ストレートも全然伸びなくなってしまいました。それで簡単に宮田選手に抜かれてしまいましたし、坪井(翔)選手とも1コーナーでブレーキング勝負になったのですが、フラフラで……」と大湯は苦しんだ決勝を振り返る。

 関係者によれば、フロアのこの部分はSF19時代から破損が生じやすい箇所なのだという。車高を下げ過ぎればボトミングにより破損へと至ってしまうため、当然大湯陣営もそこには気を使っていた。

「新チームというか、データがあまりないなかでやっているのもそうですし、今回の流れとしてもロングランに対して結構ガチャガチャ(セットアップを)変えていたんですよ。それで(姿勢・車高変化などの)計算が合わなくなって、壊れるような状態になっていたのかもしれません。いま、チームでミーティングして(原因を究明して)います」

 大湯は日曜朝のフリー走行で13番手と沈んだ。予選一発は「なんとかした」ものの、決勝に向けてセットアップの課題は多く、スタートまでになんとか打開策を見出して行くなかで、誤った方向に進んでしまった可能性もあるという。

「かといって車高を上げていくとまったく速く走れないんですよね。(日曜)フリー走行とかの雰囲気から見ても、1秒くらい遅いペースになってしまう感じだったので、ちょっと攻めに行ったセットになっていたのも事実だし、結構ガチャっと変えた部分もあり……計算やデータの取り方などが上位チームとはまだ差があって、うまくいかなかったなという感じです」

 今回はとくに最終コーナーではボトミングする車両も散見されたが、「壊れていたのもあるのですが、僕は相当(ボトミング)してましたね。そもそも、ストレートが伸びないくらいだったので……」と大湯。これらのボトミングにより、フロアが破損に至ったと考えられる。

 ロングランのペースを掴めなかった根本原因については、「ベース(セット)がない、っていうのが一番きついですね」と大湯は語る。いまだ今季導入されたSF23と新スペックのタイヤに対しては、“正解”がつかめていない状況のようだ。

「どこに決勝のベースを持ってきたらいいのか。……決勝というよりは、SF23のベースが不安定なところにいるので、走り始めで安定して上に行けないんです。そこは経験だったりとか、まだ足りていない部分なのかなと思います。予選に対してもそうですけど、毎回1歩、2歩くらい走り始めから遅れてしまうんですよね」

 第2戦富士ではタイヤグリップを失い、第3戦鈴鹿・第4戦オートポリスでは接触により決勝ではノーポイントが続いている大湯。今回もポールポジションという絶好のスタート位置を手に入れながらも、またしても結果を残せなかった。追い込まれた状況に立たされているが、陣営としては来週に予定されている富士スピードウェイのテストで、セットアップの“ベース”を見つけ、安定した戦いをしたいところだろう。

スターティンググリッドでインタビューに応えるポールポジションの大湯都史樹(TGM Grand Prix)

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