【実録】冷え切った“仮面夫婦”の老後のリアル #1「子どもに心配をかけないために」

互いに関心も愛情も向けない「仮面夫婦」。それでも何とか生活してきたけれど、子どもたちが独立して自分も年を取り、その間もずっと他人のような存在感だった夫/妻とはふたりきりの老後を迎えます。

関係に愛着のない配偶者と過ごす老後とはどんなものなのか、仮面夫婦のままやってきた人たちのリアルを実録で紹介します。

「家事や育児にまったく協力的でない夫の姿に愛情が消え、『生活費だけ負担させていればいい』と割り切って過ごしてきた夫婦生活。

寝室は別だし、子どもがいるときだけ会話をする仮面夫婦状態でしたが、息子の大学受験すら無関心で休日に趣味の釣りに没頭する様子には腹が立ちました。

『息子が進学したらいっそ離婚しようか』と考え、実家が農家で戻れば何とか生活できる算段もあり、真剣に別れることを検討しましたね。

ですが、いざ息子が県外の大学に行くと仕送りが予想より多めにかかることがわかり、『離婚すれば私の収入では仕送りが厳しいし、自分の生活も苦しくなる』と思い直しました。

息子が家を出たら、まるでひとり暮らしをしているかのように食事も洗濯も自分の分だけやりだした夫はそれでも生活費だけは変わらず渡してくれるので、ふたりきりになったといって、関わりが増えることがないのも救いだったと思います。

そして、定年を迎えたけれどすぐ嘱託社員として働き続ける話が私に持ち上がり、家事も自分のことだけ考えればいいので息子がいる頃よりずっと気楽で、『このままでもいいか』と思えるようになったのが、離婚をやめた理由です。

何よりうれしいのは自分で使えるお金が以前よりずっと増えたことで、私が嘱託社員になったことも知らない夫は私の買い物に注目することもなく、皮肉だけど穏やかに暮らせています。

今の目標は貯蓄を増やすことで、この先“ひとり暮らし”が大変になったら夫を置いてさっさと老人ホームでも入ろうと思っています。

息子は私たちの状態について『お母さんがいいなら』と納得してくれていますが、子に心配をかけない老後もちゃんと考えていきたいですね」(女性/62歳/公務員)

「子に心配をかけない老後」は自分自身についてだけであり、同居の夫については「どうなろうと興味がありません」と言い切るこちらの女性は、子どもが無事に進学したことで改めて自分の生き方について考えたそうです。

あえて離婚せずとも何とかやっていけるメンタルを持てるのなら、こんな選択肢も十分にありだと感じます。

子が離れたからこそ次は自分の自立、嘱託社員の話はまさに幸運で夫に知られずに働けているのも、仮面夫婦の現実といえます。

(ハピママ*/ 弘田 香)

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