仕事に介護に家事、コロナ禍も…44歳「ウサギユーチューバー」誕生のきっかけ

加納和子さん

 飼っているウサギを定点カメラで撮影し、動画投稿サイト「ユーチューブ」でほぼ毎日、生中継する。登場するのは垂れ耳がかわいいホーランドロップの「せきと」(雄、3歳)。野菜を食べる様子や部屋を走り回る姿に癒やされると評判で、フォロワーは1万人を超える。

 小学生のころ、学校で飼っていたウサギや小鳥の飼育小屋に通った。家でも飼いたかったが、両親が共働きでかなわなかった。大学卒業後は仕事に忙しく、ペットのことは頭から離れていたが、2018年に転機が訪れた。

 独立し、企業のウェブサイトの文面を考えるライター業を法人化したタイミングで、病に倒れた義父の看病が必要になった。仕事に介護に家事…。夫婦ともに疲労が蓄積し、「このままではだめだ」と仕事を中断した。家にいる時間が長くなり、「今しかない」とウサギを飼うことを決意。専門店で飼い方を学び、19年10月に「せきと」を迎え入れた。

 同じウサギ好きとつながりたくて、ツイッターのアカウントを設けた。ちょうどコロナ禍の巣ごもり需要でウサギが人気を集めていたが、飼い主の都合で捨てられることもあると耳にした。「自分にできることはないか」。ウサギのリアルな姿を見てもらい、飼えない人も飼っている気分になれるようにと、20年5月からユーチューブの生配信を始めた。撮影した動画を編集して他の交流サイト(SNS)でも投稿。仕事を休んでいる間もウサギのおかげで社会とつながり、自分の世界を持てた。今ではSNSの総フォロワー数が5万人を超える「インフルエンサー」だ。

 義父の病状が落ち着き、介護が一段落した昨年ごろからSNS発信のノウハウをさらに学び、メディアへのPRなど企業の広報を請け負う仕事を始めた。癒やしも仕事ももたらしてくれたウサギには感謝しかない。44歳。(中川 恵) 【メモ】ユーチューブのアカウント名は「たれみみちゃんねる」で、ライブ配信は毎日午後5~11時。「せきと」の由来は三国志に登場する名馬「赤兎馬(せきとば)」から。昼寝は人がいるソファーの下が定位置。やんちゃで食いしん坊という。

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