【今週のサンモニ】勝手に妄想して非難するモンスタークレーマー番組|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。今週は岸田首相の「笑み」一つから無茶すぎる推測をした上に、逆ギレをする方々を斬る!

「意味深な笑み」が解散を示唆した?

今週のサンモニは、会見で「意味深な笑み」を浮かべたことが解散風を吹かせた(解散を示唆した)として岸田総理を徹底的に問題視しました。

サンモニ・アナウンサー:岸田総理が衆議院を解散し、選挙に踏み切るのでは、そんな話に揺れた永田町。この1週間吹いた解散風は、火曜日(6月13日)、総理のこんな言葉から始まりました。

<VTR>
首相:情勢をよく見極めたいと考えております。
記者:不信任案は大義になるとお考えですか?
首相:それについて現時点ではお答えすることは控えます。

サンモニ・アナウンサー:意味深な笑みを浮かべた岸田総理。

まず、大きな疑義として、この時に岸田首相が笑みを浮かべていたかはかなり微妙です。 下記リンク先の映像を見ればわかりますが、岸田首相は笑顔につきものの歯を見せることもなく、むしろひきつった表情をしているようにも見えます。

岸田内閣総理大臣記者会見 ー令和5年6月13日

笑み一つで常軌を逸した無茶すぎる推測

仮に笑みを浮かべていたと仮定しても、その笑みにどのような意味があるかは岸田首相本人でなければわかりません。

その可能性は無限にあって、例えば、記者団の好印象を得るために作り笑いをしたのかもしれませんし、解散の有無という答えられるわけがない愚問にどっと疲れて思わず笑ってしまったのかもしれませんし、記者の顔に何か着いているのを見つけて笑いをこらえていたのかもしれませんし、昼間聞いた最高につまらないギャグを突然思い出して吹き出しそうになったのかもしれませんし、この会見が終わったら一杯飲めると思って嬉しさを隠せなかったのかもしれません。

この微妙な表情が解散を示唆したと考えること自体、あまりにも唐突で少しも蓋然性がない甚だ常軌を逸した無茶過ぎる推測であると考えます。

しかしながら、病的とも言える日本のマスメディアは、一斉にこの表情が解散を示唆したと断定して報じ、政治と社会を混乱させたのです。例を示します。

[テレビ朝日] 13日の会見で、笑みを浮かべ早期の解散に含みをもたせた岸田総理。[日本テレビ] 岸田首相は、かすかに笑みを見せたようにも見えました。この発言を読み解きます。(中略)実際、首相周辺は「考えてないと、見極めないでしょ」と半ば検討していることを認めています。ある野党の幹部からは「もう解散するんだろうな」と覚悟を決めたような反応までありました。 [関西テレビ] 6月13日の会見では「解散は情勢をよく見極めたい」と発言し、笑みを浮かべているようでした。(中略)岸田首相の“笑み”も含めて、どう読み解けばいいのでしょう? 【共同通信社 太田昌克さん】 “不敵な笑み”とも言えるんですが、私は、岸田首相はいつ解散するかある程度決めていらっしゃると思います。

当て推量で大騒ぎ、そして逆ギレ

当然のことながら、このような首相の表情を根拠とした推測は、ジャーナリズムとは程遠い根拠薄弱な当て推量です。会期末まで1週間も待てば確定することを無理に先読みして政治と社会に混乱を招いたのは、以上のようなジャーナリズムごっこをしている商売人たちです。

そして、この「メディアが勝手に大騒ぎした」ことを「岸田首相に振り回された」とあたかも被害者であるかのように逆ギレしたのが今週のサンモニです。

サンモニ・アナウンサー:ところが、急転直下、岸田首相は自ら解散を打ち消したのです。意味深な表情で解散風を加速させた会見から2日、何があったのか。

星浩氏:「解散なし」というのは、火曜日の時点で岸田氏の頭の中で決めていたけれどもそれを誤魔化したんだと思う。「解散なし」というのが、直接伝わるのもどうかと思ってニヤけてみたりした。

サンモニは、首相がニヤけたことを根拠に「首相は解散風を吹かせた」と非難し、首相が解散を打ち消すと「首相はニヤけてごまかした」と非難しました。

つまり「メディアが岸田首相の表情から勝手に解散を妄想した」ことを「岸田首相が意図的にニヤけてメディアを誤魔化した」ことにしたのです。これは無理やりの印象操作に他なりません。サンモニはさらに支離滅裂な主張を続けます。

これが「意味深な笑み」?

ひどいミスリードが3つもある

サンモニ・アナウンサー:一方で解散風が大きく吹き荒れたことによって得たものがありました。最重要法案と位置付けていた防衛費の財源確保法案が混乱なく採決が行われ成立。解散を恐れた野党側が審議での抵抗を封じられた形です。

何を勘違いしているのかわかりませんが、もし野党が解散を恐れて審議で抵抗しなくなるのであれば、それは野党の問題であって与党の問題ではありません。

サンモニ・アナウンサー:会期末の解散風の中、成立したのはLGBT理解増進法。当事者の人たちが求めた差別禁止を定めることなく、自民や維新など賛成多数で成立しました。しかし衆議院での採決直前、法案を批判していた高鳥議員(自民)は腹痛を理由に途中退席、およそ10分間トイレにこもり、採決に参加しなかったのです。

この説明にはひどいミスリードが3つあります。まず、LGBT理解増進法が成立したのは「解散なし」の表明の後です。解散風とは関係ありません。

また、差別禁止を求めたのは「一部の当事者とその支援団体」であって、差別禁止に反対している当事者も多く存在します。彼らの存在はネットではよく知られていますが、テレビでは報道されません。なぜなら差別禁止に反対するLGBTは、ジャニーズの性被害者と同様、テレビの論調には不都合な存在であるからです。

偉大なモンスタークレーマー番組

さらにサンモニが支離滅裂なのは、法案が成立しなかったことを問題視すると同時に法案の成立に反対した議員も問題視していることです。サンモニにとって批判する対象の認定基準は、法案への賛否ではなく、自民党に属しているか否かです。自民党に属していれば、法案に反対でも批判されるのです(笑)。そしていつの間にか、岸田首相が解散を匂わせて法案の審議を阻害したことになっているのです。

サンモニ・アナウンサー:大きく吹き荒れ、一気に吹き止んだ解散風。重要な法案は審議が尽くされぬまま成立した形です

関口宏氏:いたずらに解散を振り回してほしくないな。

渡部カンコロンゴ清花氏:解散を匂わせたり否定したりして多くの人が翻弄される中で本来なら慎重に議論し尽くして決めて行かなければいけない法案が超特急で決めて行くことになった。これって本来的だったのか。(中略)
議員には国民の方を向いて政治をして欲しい。もしそうなって行けば、本当はこの報道の尺も国会審議の内容を報道できていた。

上述したように、解散風を造って政治と社会を振り回したのは、マスメディアであって岸田首相ではありません。

ちなみに、国会で政策議論が尽くされようとも、サンモニはその内容を公正に報じるような番組ではありません。基本的にサンモニは、政策の可否ではなく、政策の論者の善悪しか報じないのです。

そもそも、先週の放送では「岸田首相が権力を振りかざして解散しようとしている」と勝手に妄想して非難したサンモニですが、今週の放送では「岸田首相は最初から解散するつもりもないのにそれを誤魔化した」と勝手に妄想して非難しました。

自らの論理矛盾など一切気にすることもなく、政敵を【ストローマン論証】で非難するサンモニはあまりにも偉大なモンスタークレーマー番組です(笑)。

番組の論調に反する発言をする者に出演の自由はない

そして、この番組の認識をさらに超越したある種のスーパーモンスタークレーマーとも言える青木理氏がこのトピックの最後を締めます。

青木理氏:例えば、防衛費の財源はかなり甘い見積もり、うまく行っている保険証を来年秋まで廃止、少子化対策の財源先送り、LGBT差別禁止を含めなかったどころか差別増進法、福島の状況が何も変わっていないのに完全に原発回帰、難民を追い返す入管難民法が通っちゃった。しかも解散権を振りかざして首相がニヤニヤする。この国会は戦後最悪だった。

サンモニでは、このようなハチャメチャな限界左翼の一方的な放言も他の出演者から一切反論を受けることはありません。

なぜなら出演者全員が限界左翼であるからです。サンモニには言論の自由はありますが、番組の論調に反する発言をする者に出演の自由はないのです(笑)。

中国共産党の全国人民代表大会のようなものです。よくもまぁこんな偏向番組が四半世紀を迎えようとしている21世紀に堂々と存在しているものです。

藤原かずえ | Hanadaプラス

© 株式会社飛鳥新社