自動田植え機、省人化に効果 スマート農機利用拡大 GPS搭載、無人で作業 導入の営農組合「デメリットほとんどない」

農業者らが見守る中、無人で走行する田植え機=6月10日、神戸市西区神出町北

 兵庫県内でスマート農業の技術を備える高性能農機の使用が広がっている。神出北営農組合(神戸市西区)は今季、自動運転の田植え機を導入。衛星利用測位システム(GPS)を搭載し、無人で直進や旋回をしながら苗を植えられる。作業の省人化や効率化が期待できるという。(三宅晃貴)

 県農産園芸課によると、GPSで直進をサポートするなどの機能を含む高性能田植え機の2021年度の県内利用面積は169.5ヘクタールと、前年度比約1.8倍に拡大。耕運などさまざまな作業に用いるトラクターも109.2ヘクタールと同約1.6倍に増えた。

 同営農組合が導入した田植え機は、クボタが20年10月に業界で初めて自動機能を搭載し、発売したモデル。操縦者と苗の補給などを担う補助者が乗車せずとも、田植えができる。同社は、もみを直接まくよりも、水や除草などの管理がしやすく、収穫量も安定しているとする。

 ただ価格は従来の田植え機より150万円前後高い。同社担当者は「現在は、無人と比べ安価な直進アシスト機能付きの田植え機がスマート農機の主流だが、地域の高齢化も相まって注目度は高まってきている」としている。同社は今月、来年1月にコメや麦を無人で収穫できるコンバインの発売も発表した。

 井関農機(松山市)も無人で作業するトラクターと田植え機を発売済み。同社担当者は「機械に慣れていない人も操作を担当するようになってきた。市場は大きくないが年々関心は高まっている」。ヤンマー(大阪市)も無人運転のトラクターを製品化している。

 神出北営農組合で今月中旬に行われた最新の田植え機を使った作業には、西馬伸彦組合長(49)らが立ち会った。まず人が操作して農地の外周を走り、田んぼの形を把握させるマッピングを行った。結果に基づき、田植え機が最適な経路を自動計算し、人が乗らずとも無人で作業が進んだ。超音波ソナー8個を備え、前方の人や障害物を検知すると自動停止するという。

 西馬組合長は機械導入について「年々高齢化が進む就労者の省力化が一番大きい。次の年からはマッピングがいらないしデータも蓄積できる」とメリットを強調する。現在は農業者が田んぼで監視していなければならず、別の作業をするのは難しいが「体はかなり楽。デメリットは、操作を覚えないといけないことぐらいで、ほぼない」と効果を実感していた。

 同組合では今季、管理する水田の半分に当たる20ヘクタールを自動で植え付けた。来年に残る半分でも行って、田のデータを蓄積。再来年にはほぼ無人での田植えも可能になるという。

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