梅の実の季節

 梅の実が収穫される頃になった。17日の情報面「歳々元気」は〈遣唐使によって中国からもたらされたといわれている〉と、梅干しの歴史に触れている▲今の時季と梅、そして中国とは縁が深いらしい。「梅雨(ばいう)」は中国から入った言葉で「梅の熟する頃の雨」に由来するという。もともと「黴雨(ばいう)」だったが、不快な「黴(かび)」の字を避けて梅雨に変わったともされる▲それをなぜ「つゆ」と呼ぶのだろう。梅が熟して潰(つぶ)れたり、長雨で食べ物や衣服が傷んだりすること、つまり「潰(つい)ゆ」からきていると一説にいい、「露」の連想とも一説にいう▲「潰ゆ」とは「ついえる、損なわれる」ことだが、この時季は人の健康にも「潰ゆ」の一語が付いて回る。県内できのう、気温が30度を超える真夏日の所もあった。きょうも熱中症に要注意という▲「潰ゆ」の種は尽きないが、少し元気のもとになりそうな「うめぼしの歌」という明治の頃の歌を、季節の話題の事典で見つけた。当時、小学生の国語読本に載っていたという。〈五月六月実がなれば/枝からふるい落とされて/近所の町に持ち出され/何升(しょう)何合(ごう)はかり売り〉…▲昔は街角で量り売りされていたのだろう。「潰ゆ」の種もあれば元気の種もある。梅干しの売り声と買い求める人々の声が、遠い昔日から響いてくる。(徹)

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