長崎大移転断念 産学連携の構想 白紙に 学生「現状のままがいい」

長崎大が経済学部などの移転先候補地としていた駐車場。左は長崎水辺の森公園=長崎市

 長崎大が経済学部などを長崎市常盤町の長崎県有地に移す計画を断念し、「まちなかキャンパス」の構想は白紙となった。移転による産学連携などを期待していた県や市は、大学側の判断を一定理解しつつ、落胆もにじませた。現役の学生や移転に反対していた近隣商店街は「現状のままがいい」と冷静に受け止めた。
 常盤町への移転構想は今年2月、産学官トップが意見を交わす「長崎サミット」で長崎大が表明し、県市との検討会で協議していた。ある県幹部は「IT系の企業は出島などに集まっていて、相乗効果も期待できた」と移転断念を惜しみ、「学内で話がまとまらなかったのかもしれない。もっと時間をかけて検討を続けてもらえれば良かったのだが…」。市担当者は「期待はしていたが、最終的には財源確保の問題などを踏まえた長崎大の経営判断として受け止めたい」と淡々と述べた。
 移転の俎上(そじょう)に載せられていた同市片淵4丁目の経済学部片淵キャンパス。同学部3年の女子学生は「移転で(学部の)歴史的価値が薄れるのを心配していた。今のままで不満はない」と胸をなで下ろした。1年の女子学生も「移転にメリットを感じない」と冷ややかだった。
 片淵キャンパスの移転に反対していた新大工町商店街振興組合の児島正吾理事長は「大学は移転自体を断念したわけではないと思う」と警戒し、「長年培ってきた地域とのつながりを大切にしてほしい」とくぎを刺した。

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