天国の母に捧げるメジャーV クラーク「彼女のために」

初のメジャータイトルをつかんだウィンダム・クラーク(撮影/中野義昌)

◇メジャー第3戦◇全米オープン 最終日(18日)◇ロサンゼルスCC(カリフォルニア州)◇7423yd(パー70)

優勝パットを決めたウィンダム・クラークは、天を見上げ、そして顔をキャップにうずめて勝利の瞬間に浸った。そうそうたる顔ぶれが揃う中でバーディ、ボギーを繰り返し「70」でプレー。11年大会覇者で世界ランキング3位のロリー・マキロイ(北アイルランド)を1打差で振り切り、初のメジャータイトルを勝ち取った。

下部コーンフェリーツアーで下積み時代を過ごし、18年後半からPGAツアーを主戦場に戦ってきた29歳。約1カ月前の5月「ウェルズファーゴ選手権」でツアー初優勝を遂げ、「6歳くらいから夢見ていた」姿をつかみとった。

天を見上げ、母を思う(撮影/中野義昌)

最終日は“父の日”だったが、思いを馳せたのは、10年前に55歳の若さで他界した母、リセ・テベネットさんだった。自分がオクラホマ州立大でプレーしていた19歳の時、乳がんが原因でこの世を去った。「20、21歳の時にゴルフをやめようと思って。ひどいプレーをしていた」。ゴルフを始めたきっかけがリセさんだっただけに、喪失感で心が荒れていた。

「ただゴルフのプレッシャーに負けていた。母がいないこと、電話ができる人がいないことは私にとって本当につらいことだった。プロになってからも『もうやめようかな』と思ったことはある」。それだけに必死で続けた末のビッグタイトルに「我慢してよかった」と心底思える。

この一週間、クラークは「特別な雰囲気」を味わっていた。舞台のロサンゼルスはリセさんのルーツの場所でもあった。「私の両親はリビエラカントリークラブで結婚しました。母は数年間、このロサンゼルスに住んでいたことがあって。彼女の20代、30台前半を知っている人たちが何人も僕の所に来て、母の写真を見せてくれた。素晴らしい一週間だったよ」

母親からよく言われた「大成しなさい(Play big)」を心に刻んでいる。「彼女が病で倒れたときに、『より大きなもののためにプレーをしなさい』と言われたんだ。僕には大勢の人が見てくれるプラットフォームがある。彼女のためにもそうなりたいし、僕を見てインスピレーションを与えることができればと思っている」。身近な存在を失ったつらさを乗り越えて、大きな勝利を手繰り寄せた。(カリフォルニア州ロサンゼルス/石井操)

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