兵庫運河で16年続く真珠生産がピンチ 異常気象で減少か、ストックも枯渇 神戸

長年続けてきたアコヤガイを使った真珠養殖について語る「兵庫運河真珠貝プロジェクト」の道林幸次会長=神戸市兵庫区

 神戸市兵庫区の「兵庫運河」で、16年前から続くアコヤガイを使った真珠の生産がピンチだ。環境学習の一環で、親子らが協力して管理し、11~12月に美しい真珠を取り出す人気のプロジェクトだが、ここ数年は生産量が減少。以前からためていた真珠の「ストック」も昨年でほぼ無くなった。原因は不明だが、高温や豪雨などの異常気象が影響している可能性もあり、今年の育成状況が心配される。(杉山雅崇)

 真珠の生産は、運河周辺の住民らでつくる「兵庫運河真珠貝プロジェクト」が2007年に始めた。

 兵庫運河では、1960~70年代の高度経済成長期に水質が悪化したが、その後、周辺住民や地元企業による水質改善への取り組みが進んできた。プロジェクトもその一環で、水質浄化に効果があるアコヤガイで真珠を養殖し、子どもの環境保全や命の大切さを学んでもらおうと企画した。

 同プロジェクトには、真珠加工販売会社「大月真珠」(神戸市中央区)が協力。毎年、応募した親子らが初夏にアコヤガイに、真珠の元となる「核」を入れ、貝の掃除などの管理も行う。11月ごろには、貝を引き上げて真珠を採取し、その後、アクセサリーを作っている。

 近年、兵庫運河では水質浄化が進み、マサバやクロダイ、カタクチイワシなど、多様な生き物が確認されるようになった。一方、近年の真珠の生産は順調とは言い難いという。

 同プロジェクトの道林幸次会長(60)=神戸市兵庫区=によると、昨年に核を入れたアコヤガイ390枚のうち、秋まで生存したのは199枚。真珠の質、量ともに不十分で、2020年から3年連続で残念な結果となった。

 過去にもアコヤガイが全滅したり、思ったように真珠が採取できなかったりしたことはあった。19年には、日本の三大産地の愛媛、長崎、三重の各県でアコヤガイの大量死が見つかり、兵庫運河のアコヤガイも全滅したという。

 ただ、これまでは前年までに採取し、保管しておく真珠の「ストック」があった。それをイベント時に子どもたちに分配し、参加者全員に真珠を行き渡らせることができていたという。

 だが、近年続く不十分な結果により、真珠のストックは昨年度でほぼ尽きてしまった。今年も育成状況が好転しなければ、恒例のアクセサリー作りに支障が出る可能性もある。

 養殖がうまくいかないはっきりとした原因は不明だが、道林さんによると昨年は、▽夏場に水温が高い状態が続いたこと▽海水の酸素量が年間を通して低かったこと-などが考えられるという。

 近年、全国の例に漏れず、兵庫県内も酷暑や豪雨に見舞われることが増えた。道林さんは「運河は水深が浅い。そのため、たくさん雨が降れば海水の濃度は下がりやすく、高温ならば海水温度にも影響が出やすいんです」と語る。

 ただ、このプロジェクトは、真珠を生産するだけではなく、兵庫運河の歴史や自然への理解を深める目的もある。今年の活動は25日にスタートの予定。道林さんは「採取の量が少なくても、子どもたちが学べることはある」としながらも、「ずっとつないできた真珠のバトン。今年はうまくいってほしい」と願っている。

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