南米ならこの人!亘崇詞さんが教えてくれたペルー戦の見どころ 「三笘選手や久保選手らに一泡吹かせようと…」

日本代表が本日20日に対戦するペルー代表は、FIFAランキングで日本の一つ下の21位に位置する手ごわい相手だ。

16日には韓国を相手にアウェイで1-0の勝利を収めている。

先日のエルサルバドル戦とは明らかに違う相手にするこの試合の見どころはどのあたりになるだろうか。

日本屈指の“南米通”で、2000年代にペルーの強豪スポルティング・クリスタルでのプレー経験もある、亘崇詞さんに試合の注目点などを聞いた。

「ペルーはすごく良いチームです。ただ…」

――今回は亘さんにとって所縁のあるペルーとの試合となったわけですが。

ペルー代表はこれまで結構日本に来ていますよね。

日本からするとペルーはやっぱり「仮想・南米(の強豪)」。パラグアイなんかもそうですけど、今後ワールドカップで当たるかもしれない。その相手として丁度いいやというところで当てられているんだと思います。

でもまあちょっとそれが面白いというか、それが僕には結構ツボで。

ペルーは強いですよ。たしかに中米のチームとは違います。だけどやっぱりね…。ワールドカップに常に出ていて、いつもしのぎを削ったとこから何とか(ワールドカップに)入ってきているウルグアイやアルゼンチンの選手たちの責任感とは違うんですよ。

繰り返しますが、相手としてはすごく良いチームですよ。ただ、練習試合の一つとしてはいいですけどお金を払ってまで戦うのは…僕は日本好きですからそう思ってしまいますね。

アルゼンチンはもう割り切っているじゃないですか。

今はワールドカップのチャンピオンとしてどちらかといったら「世界にサッカーを広める」というような国と試合をして回ってたりとか。それはもう国民は分かっていますから。

今の時点で「なんでお前あんな弱いとことやるんだ!」とか「インドネシアとか行ってないでさあ」「オーストラリアとかしなくても」みたいなそんなことは言わないわけですよ。

だけど日本は、もっとなんかなぁというのは思いますけどね。

――なるほど。そうしたなかで行われる今回のペルー戦、亘さんが注目しているところは?

ペルーは監督が代わって、今すごく大事な時期なんです。

※昨年8月に就任したフアン・レイノソ監督。84試合の代表キャップを持つペルー代表のレジェンドだ。

この強化試合も韓国と日本に勝とうとしますし、遊びではないという意識で監督がちゃんとやってくれると思うのでそういう面ではすごく良い相手です。

この間ペルー料理を食べに行った時のペルーの人たちに聞くと、「この間、日本は(エルサルバドルに)大勝して、(ペルーも)あんなふうにならなければいいけど…」みたいに言っている国なんです。

「でもペルー強いから勝っちゃうんじゃない?」みたいな話をしても「いやいや日本も強いからね、今」みたいな。どちらかと言うとちょっとネガティブところがあります(苦笑)。

でも選手としては海外組もいますし、良い選手はいますから、逆に言うとチャレンジ精神ですよね。今だと「日本に一泡吹かせてやれ」って。

これだけ騒がれている三笘選手とかですね。ペルーの方々もみんな知っていますよ。これだけ海外で活躍している日本人がね、久保選手だったり、ヨーロッパでも活躍している選手がいるわけですから。その選手たちに一泡吹かせようという。

やっぱり個での打開力もありますし、“怖さ”はあります。彼らは失うものがないですし、そういう意味では面白いというかね。そういうのをペルーが思い切りやってくれると、いい相手になると思います。

日本人の器用さとペルー人の器用さってまた違うんですよ。

日本人のリフティングが上手い、フリーキックが上手いとかと比べて、本当に足元の技術が高い。南米の中でも上手いんですよ、ペルー人というのは。

サッカーの雰囲気で言うと、ウルグアイ、アルゼンチンはすごくヨーロッパっぽいサッカー。ボールタッチもそんなに上手くなくて。

でもポルトガル語を話すブラジル人とかそれより北の人たちですね。ポルトガルのサッカーがそうじゃないですか。結果を出さないけどやっぱり上手い。ペルー人もあれに似たところがあります。

それから、アルゼンチンやウルグアイのサッカーは、イタリアやギリシャのサッカーに似ているところがある。足元が上手くなくても魅せなくても、1-0で勝っちゃえという。

その考え方と、ブラジル人みたいに94年のワールドカップで優勝したのに、「ワールドカップであんなサッカーをして帰ってきやがって」と物投げられる国。バルセロナみたいに良いサッカーを見せろとか、美しいものを見せろという。

南米、南米とみんな言うんですけど、南米の中でも一括りではないんですよね。

元アルゼンチン代表の(フアン・セバスティアン・)ベロンの有名な言葉があります。

(2009年のクラブワールドカップで)バルセロナとエストゥディアンテスが戦う時に記者が「向こうは“美しいものを見せる”と言っていますけどエストゥディアンテスはどうですか?」と聞きました。

するとベロンは「そんなに美しいものが見に行きたいんだったらミュージアムとかテアトロ(劇場)に行け」と言い放ったんです(笑)。

その考えなんですよ。考え方が全然違うんです。

ボリビアとかになると高地のサッカーですよね。とにかく自分たちの地の利を生かして、相手にターンが入るボール回し方をして、前半のうちに無酸素運動を何回させて苦しめるか。

あとミドルシュートを打って…今でこそ無回転とか当たり前にみんな蹴りますけど、あの蹴り方を昔から蹴っていた人がいました。あれを高地でやられたら物凄いボールが曲がるんです。

ペルー時代に僕は首都のリマに住んでいました。リマは標高ゼロなんです。でも2試合にほぼ一回は、クスコとか3000メートル以上のとこでやるんです。

だからその時の対応力というのがペルーにはあります。「このピッチだったら、この状況だったらこういう風にサッカーしよう」というのができる子たちなんです。そういう器用さがあります。

今回の本気のペルーで、1試合目(エルサルバドル戦)のような簡単なゲームにならず、ペルーが本当にチャレンジ精神を持ってやってくれて良い試合になってくれたらと思っています。

日本にとっても本当に強化の良いゲームになったらなというのが、僕がこのペルー戦に期待することですね。

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日本代表とペルー代表の一戦は、本日18:55よりパナソニックスタジアム吹田で行われる。

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