ミシュラン、2025年のWECとIMSAに新仕様タイヤを導入へ。再生可能素材を用い長寿命化を図る

 ミシュランは、2025年にWEC世界耐久選手権のハイパーカーとIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTPクラスに新しい仕様のタイヤを導入する予定であり、開発においてタイヤの長寿命化と持続可能な素材の使用比率の向上を目指している。

 フランスのタイヤメーカーは現在、WECとIMSAの両トップカテゴリーに独占的にタイヤを供給しており、2023年シーズンは基本的に同じ仕様のタイヤを供給している。

 ミシュランのモータースポーツディレクターであるマチュー・ボナデルによると、再来年のシーズンには新しい仕様でこのレンジをリフレッシュする予定だという。

 次世代タイヤは、より多くのバイオソース、再生可能素材、リサイクル可能な素材を含み、より長いスティントを可能にすると予想されている。ボナデルは、ル・マン24時間レースでのラップタイムを維持しながら、タイヤの寿命を現行モデルの4スティントから5~6スティントに延長することを目標に掲げた。

「私たちはより長い距離、つまり摩耗の少ない、より耐久性の高いタイヤと、より高い割合で持続可能な素材を含めることに焦点を当てている」と同氏はSportscar365に語った。

「私たちは3分14秒という(ル・マンのレコードタイム)記録を破ろうとは思っていない。しかし、3分30秒より遅くなることは避けたい。我々は、異なる世代のタイヤを使用して、性能の面では(現在と)非常によく似ているところに行き着くつもりだ」

 ミシュランの持続可能な素材の導入は、“2050年までに持続可能な素材のみで構成されたタイヤを開発する”というミシュランの包括的な目標に沿ったものであり、中間目標である2030年までに40パーセントを達成するという目標と一致している。

 ミシュランによると、レーシングタイヤの環境フットプリントの75パーセントは素材に起因し、残りの15パーセントはサーキットでの使用を含む残りのライフサイクルに起因するとされている。

 2025年に導入される新仕様タイヤの素材は伏せられているが、ミシュランは最近、使用済みタイヤからリサイクルした天然ゴムとカーボンブラックに加え、スクラップスチール、オレンジとレモンの皮、松の木の樹脂、さらにひまわり油を使用した、“ミッションH24”水素プロジェクト用の63パーセント持続可能タイヤを発表した。

 ボナデルは、「タイヤがサステナブルな素材でできていればいるほど、この特定のタイヤからのフットプリントを減らすことができる」と述べた。

「今年はスリックタイヤに30パーセント、ウェットタイヤには40パーセントの(持続可能な)素材を使用している。それらは今後スリックで40パーセント以上、ウエットでは50パーセント以上になる予定だ」

現在のWECハイパーカー/IMSA GTP用タイヤは、ル・マンで4スティントを走れる設計がなされている

■タイヤはル・マンの歴史の一部

 ミシュランは、ル・マンのトラック温度やコンディションの幅をカバーするため、新仕様のタイヤでも引き続きコンパウンドの異なる3種類のスリックタイヤを用意する予定だ。同シーズン他のWECラウンドや、北米のウェザーテック選手権でも、同じコンパウンドを選択できるようにする計画だという。

 また、ウエットタイヤの仕様をひとつにするという方針は、新世代にも引き継がれることが確認された。

 ボナデルは、現在ル・マンでグッドイヤーが供給しているLMP2カテゴリーのように、ハイパーカーのタイヤレンジが単一のコンパウンドに集約されることをミシュランは「望んでいない」と指摘した。

「それは、私たちからすると正しいアプローチだと感じるものではない」と同氏。

「レースにおいて、タイヤはつねに重要であると感じている。タイヤはル・マンの歴史の一部だ。私たちは、何らかのタイヤ戦略を持ちたいと考えている。それは重要なことだと思う」

「私たちはなにも10種類のタイヤを求めているわけではない。ある1台のクルマのためのタイヤを求めているわけでもない。それはすでに標準化されているんだ」

「将来的に2種類に移行することは可能だろうか? 将来、ある仕様があまりうまく使われていないかどうかが分かってくる。そうすれば、それを取り除くことができるはずだ」

「6スティント(保つ仕様)に移行すると、ある時点でソフトタイヤが摩耗の面で柔らかすぎるかもしれない。では、それをミディアムに近い仕様にした場合、非常に硬いタイヤが必要になるのか? それはこれから決めることだ」

「すべての領域をカバーするためには、3種類のスリックタイヤが必要だと考えている。(ル・マン以外の)他のレースでは最大2種類となる」

 ミシュランの将来のハイパーカーとGTPタイヤの仕様に関する計画は、独占供給契約の一環として、WECとウェザーテック選手権の主催者とともに開発されることとなる。

 ボナデルは「我々にとっての課題は、(素材を変えながら現在と)同じパフォーマンスを維持することだ」と続けた。

「30年間開発されてきたテクノロジーを、高性能でありながら環境負荷の少ない新しい技術に置き換えること。これが技術的課題を興味深いものにしている理由だ」

「WECは、新しいタイヤや技術を導入し、我々にチャレンジする可能性を与えてくれるんだ」

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