「ポンプを使っても追いつかない」記録的豪雨で“内水氾濫” 浸水被害の沼津では…【わたしの防災】

6月2日の台風2号の接近に伴う記録的な豪雨で、静岡県沼津市などでは市街地に排水能力を超える多量の雨が降って浸水被害が起きる「内水氾濫」が発生しました。沼津市では、深さが1m50cmにもなる所もありましたが、雨水が排水できないことでどんなことが起きていたのでしょうか。

土砂災害や川の決壊などの被害が出た6月の記録的豪雨。沼津市では、道路が冠水したり建物が水に浸かったりする被害が出ました。画面左側の手すりの向こうにある浪人川の水があふれて、画面奥の狩野川の方へ激しく流れている様子です。

<山下誠次さん>

「そこのプラットホームみたいな所がそこですからね。あの階段は水没している」

沼津市で浸水被害があった大岡地区に住む山下誠次さんは、その時の様子を携帯電話で撮影していました。

<山下誠次さん>

Qどんな風になりましたか?

「浪人川があふれて、狩野川が心配で見に行きたかったが通れなかった。前の(大雨)時は長靴を履いて行けた。今回はここ(腰)までですから」

この場所は、沼津市を流れる狩野川に注ぐ支流の浪人川。大雨が降ると、狩野川に流れ出すはずの水があふれることがある所です。

水害は、大きく分けて「外水氾濫」と「内水氾濫」の2つがあります。磐田市で起きたような、河川が増水して水が堤防を越えたり、堤防が決壊したりすることで川の水があふれ出すことを外水氾濫といいます。

一方、市街地などの排水能力を超える大量の雨が降った時、雨水を大きな川に流せなくなり水がまちにあふれるのが内水氾濫です。大雨が降って川が増水する時、内水氾濫をどのように防いでいるのでしょうか。

<沼津河川出張所 下田貴之所長>

Q大きい川の水位が上がってくると?

「大きい川の水が小さい川に流れ込まないようにゲートを閉めます。小さい川の水は、ふたをされて行き場がなくなりますので排水機場の方に流れ込んで、中小の川の水を強制的に大きな河川に流す」

Qポンプがある排水機場に水を回してそこから吐き出す?

「強制的に吐き出す。そうですね」

最初に紹介した浪人川には排水機場がありましたが、水があふれました。

<沼津河川出張所 下田貴之所長>

「国が管理する『浪人川排水機場』はその時の雨でもポンプは正常に作動していたんですが、排水が間に合いませんでした。そのためこの辺りが浸水してしまった。市街地に排水能力を上回る雨が降ったことによる『内水氾濫』が起きたと考えられます」

毎秒7.2トンの水を流せるポンプでの排水が追い付かないほどの大雨でした。

今回の記録的豪雨では、「排水機場」が機能せず浸水した所もありました。記録的豪雨で「きせがわ病院」などが1m50cmほど水に浸かりました。病院の横にある沼津市管理の白滝排水機場が2日の大雨で作動したものの途中で停止。浸水被害が拡大したとみられています。まだ復旧しておらず、沼津市は国土交通省と連携して仮設ポンプを設置し、今後の大雨に備えています。

<沼津市河川課 疋田次克課長>

「(仮設ポンプで)毎秒3トンの、白滝排水機場と同じ排水機能を確保しています。1日も早く復旧するように努めております」

<沼津河川出張所 下田貴之所長>

「流域で降った雨量を排水できるだけの体制を自治体と連携して構築していくことで水害を防ぐことが重要になります」

線状降水帯の発生など、過去に経験がない記録的な大雨が長時間降るケースが増えています。内水氾濫を防ぐため排水機場が正常に機能する維持管理が重要となっています。

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