「物言う株主」要求多様化、改革迫られる企業に対話の必要性 兵庫でも4社で提案、総会本格化へ

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 3月期決算を終えた兵庫県内上場企業の株主総会が、21日から本格化する。東京株式市場の日経平均株価がバブル後最高値を付ける中、株主は企業価値のさらなる向上に期待を寄せる。海外の投資ファンドなどから株主提案を受けた県内企業は、過去最多の4社に上った。各社は多様な株主との対話を求められている。(高見雄樹)

 3月期決算企業の大半は、決算期末から3カ月弱の6月下旬に定時株主総会を開く。多くの場合、取締役の選任や配当額の決定など、会社が提案する2、3本の議案が賛成多数で可決される。

 今年は一定の株式を持つ株主が議案を「株主提案」し、経営の改革を迫るケースが全国的に増えている。株式の管理などで企業を支える三井住友信託銀行によると、6月に総会を開く企業で株主提案を受けたのは、前年比16%増の89社(9日時点)と過去最多だった。うち半数の44社が「物言う株主」「アクティビスト」と呼ばれる投資ファンドなどから提案を受けた。

 県内でファンドから提案があったのは3社。金属表面処理剤の石原ケミカル(神戸市兵庫区)は昨年に続く2回目、業務用音響機器のTOA(同市中央区)と産業用ベルトのバンドー化学(同)は初めて受けた。いずれも自己株式の追加取得や、取締役の過半数を社外取締役にするよう求められた。

 自己株の取得は市場に出回る株が減り、株価の上昇につながりやすい。取締役に社外の人材が増えると、多様性などの観点から経営の質が高まるとの考え方がある。

 3社はこうした提案に対し「自己株取得や配当で一定の利益を株主に還元している」「東証はプライム上場企業に社外取締役を3分の1以上とするよう求めており、基準はクリアしている」などとして反対を表明した。提案は安定株主の存在などから否決される可能性が高いが、株主からの要求や提案はこれまで以上に多様化している。

 TOA広報室は「提案に反対はしているが、企業価値を高めるという方向性は同じ。対話を重ねて世の中の考え方と当社の思いを合わせていきたい」とする。

 バンドー化学は「株主提案にコメントする立場にない」とした上で「プライム上場企業として(株主や顧客、従業員ら)ステークホルダーから適切な評価を得られるよう努力する」とした。

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 県内上場企業の株主総会は21日、神戸製鋼所やJCRファーマ、TOAなど4社が開いて本格化する。ピークの29日は19社と、3月期決算企業の27%が集中する。

【株主総会】株式会社の最高意思決定機関。会社の運営ルールを定めた定款の変更や取締役の選任、解散や合併など、会社の重要事項を決める。株主は持ち株に応じて議決権を得る。会社法では、定時株主総会を毎年最低1回開くことを定めている。

 株主提案 株主が経営に参加する権利「共益権」の一つ。6カ月以上前から継続して、総株主の議決権の1%以上か、300個以上の議決権を持つ株主が総会で議案を提案できる。複数の株主による共同提案も可能。総会の8週間前までに手続きする必要がある。

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