「水戸塾」の新寮が完成 東京・世田谷 伝統守り115年

新しい学生寮の前に並ぶ塾生と水戸育英会の役員=東京都世田谷区

東京都内や近郊に通う茨城県出身の男子大学生を受け入れる水戸育英会学生寮(通称水戸塾)が、東京都世田谷区用賀の敷地で建て替えられた。1908(明治41)年の創設以来、約1600人が同学生寮で青春を過ごし、映画監督の深作欣二氏(故人)などの人材を輩出してきた。115年目の新たなスタートに、塾生は「伝統を守りつつ、新たな知見でより良い塾をつくりたい」と歴史を刻んでいく。

茨城県出身の大学生を支援して社会に貢献する人材を育成しようと、水戸育英会が07(明治40)年に発足。翌08年、東京都墨田区本所の水戸徳川家下屋敷跡(現在の隅田公園)に最初の寮が建てられた。しかし、23年の関東大震災で焼失。渋谷・猿楽町を経て、65年に現在の用賀に移った。今回、建物の老朽化のために建て替えが行われ、2月に新寮が完成した。

これまで約1600人の塾生が巣立ち、OBには深作氏をはじめ、警察庁長官や会社経営者など各界の人材を輩出している。

最大の特長は、学生自ら管理運営する「自治寮」である点だ。ソフトボール大会や旅行などの年間行事、施設管理の方針を決める。月1回は理事長ら参加の下、皆で寮運営を議論する。

塾長の明治大3年、金沢凜太郎さん(20)=阿見町出身=は「同じ土地の出身同士で過ごしやすく、他大学の塾生との交流は刺激を受ける。行事の運営でスケジュール管理も意識付け、他ではできない経験を積める」と、充実した寮生活について説明した。副塾長の日本大3年、青沢遥輝さん(21)=日立市出身=は「今までの伝統を守りながら、新たな知見を得てより良い水戸塾をつくりたい」と話した。

9月まで1、2年生の塾生を募集している。対象は原則として県内に長年在住した、県内の高校出身者。寮費は月6万5千円(朝夕2食付き、光熱費込み)。問い合わせは水戸育英会(電)03(3428)6141。

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